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M One News 19-02           2018/12/28 ふるさと納税適正化ほか

 消費税率アップに伴う消費テコ入れ策以外は、細かい点ばかりです。
 
(1)ふるさと納税の適正化
 行き過ぎたふるさと納税を是正するため、返礼品を返礼率が3割以下の地場産品に限定したうえで、適用自治体を総務省が指定する改正がなされます。
 2019/06/01~の寄付に適用されます。
 
(2)個人事業主の事業承継税制創設
 法人に関しては事業承継税制が昨年、大幅緩和されましたが、個人事業主にも同様の制度が創設されます。
 土地400㎡、建物800㎡までの贈与税・相続税を全額猶予されるとのことなので、かなりの効果が期待できるでしょう。
 多額の税負担による廃業を防ぐためですが、旅館や酒蔵、町工場などが想定されているようです。
 
(3)未婚のひとり親支援
 子ども貧困に対応するため、低収入の未婚ひとり親の住民税を非課税にしたうえで、年17,500円の手当を出すこととしました。
 
(4)教育資金贈与の範囲を一部限定
 子や孫の合計所得金額が1,000万円超の場合や、23~29歳の子や孫の趣味・習い事は対象外となります。
 
(5)NISA口座開設の年齢要件引き下げ
 NISA口座開設の年齢要件が、1/1時点で20歳以上から18歳以上に引き下げられます。

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M One News 19-01           2018/12/28 消費税率アップに伴う消費テコ入れ策

 今年の税制改正案の目玉は、何と言っても消費税率アップに伴う消費テコ入れ策です。
 
 前回の消費税率アップ時の景気低迷の反省から、景気低迷させないよう、さまざまな消費テコ入れ策が講じられています。
 
 
 例えば、住宅。
 2019/10/01~2020/12/31購入の自宅に適用される住宅ローン控除を3年間延長し、11~13年目に消費税2%分を税額還付しようというもの。
 「延長」とありますが、1~10年目は住宅ローン残高×1%、11~13年目が建物価格×2%と、還付税額の計算方法が異なるので、別の制度と思っておいたほうがいいかもしれません。

(ポイント)
 ・適用は居住用の自宅のみ
 ・11~13年目に所得税・住民税ともに税額が無ければ、還付されずに切り捨て
 
 売却してしまった場合でも還付されるのか、などの細かい点はまだわかっておりません。
 
 
 車に関しては、自動車取得税が1年間非課税となります(良燃費車のみ)。
 ついでに触れると、毎年支払う自動車税の恒久減税もなされます(2019/10/01~新車登録分)。

 所有から利用への変化に対応できているとは言い難く、また、排気量を課税ベースにする税体系では、排気量がない電気自動車には対応できないなど、まだまだ議論は道半ばといったところです。
 
 
 生活必需品への税率を抑える軽減税率も、同時に導入されます。
 食料品が代表的なものですが、10%の食品と8%の食品が入り混じる売り場で正確なレジ処理ができるのか、店内飲食とテイクアウトをきちんと区分できるのか、など懸念が尽きません。
 
 
 プレミアム商品券も発行されます。
 2万円で2万5千円の買い物ができる商品券です。
 2020/03までの利用期限とされています。
 
 
 また、キャッシュレス決済促進のため、ポイント還元制度も導入されます。
 この制度は、キャッシュレスで買い物した場合に限り、ポイントで還元するというもの。
 ただ、中小零細商店やカード会社を中心に反対の声も多く、悪用されかねない制度の欠陥も見つかったことから、本当に導入されるのか予断を許しません。

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M One News 18-25           2018/12/24 エターナル・サンシャイン

 バレンタインの直前に、あるカップルは喧嘩をして別れてしまう。
 
 彼が仲直りしようと思っていた矢先、「彼女はあなたの記憶をすべて消しました」という手紙がクリニックから届き、ショックを受ける。
 
 彼女に会いに行くと、自分のことを全く覚えていない彼女の態度に、彼女は本当に自分の記憶を消したのだとわかり、さらにショックを受ける彼。
 
 思い悩んだ挙句、つらい記憶を消そうと、彼女同様、そのクリニックを訪れる。
 自分も彼女との記憶を消去するために・・・。
 
 そんな冒頭シーンから始まる映画「エターナル・サンシャイン」。
 
 
 
 誰にもつらい記憶や嫌な記憶はある。
 その記憶が心のとげのようにささったままだったり、ふとしたことで蘇って仕事や勉強が手につかなくなったり。
 忘れようとすればするほど、ますます頭を離れなくなる・・・。
 いっそのこと、きれいさっぱり忘れてしまいたいと願うのは、誰しも同じだ。
 
 「忘却はより良き前進を生む」(ニーチェ)
 
 ニーチェの言葉どおり、記憶を消す手術を受け始めた彼だったが、彼女こそ記憶から消してはいけない大事な女性であると次第に気づき、最後は必死に抵抗を試みる。
 器具につながれ、別れから出会いの新鮮さに遡る記憶を逆行する中で、愛したり、喧嘩したり、葛藤したりした毎日を思い出す。
 
 そして、甘い愛の言葉をささやきあうだけでなく、葛藤や喧嘩などを含めた全体こそが、2人の絆であり、「現実」だったと悟るのだ。
 
 
 
 きっと、2人とも記憶を消したのは1回だけではあるまい。
 医院に行けば、簡単にリセットしてくれる。
 喧嘩してできた心の傷に耐えられない、もうイヤだ!
 と、楽しい記憶もあるものの、つらい記憶の方が多いから、完全に忘れようと、記憶を何回も安易に消してきたはずだ。
 
 にもかかわらず、また出会い、惹かれ、別れ、記憶を消すという、同じ行動を繰り返すことも、映画の中で明らかになる。
 
 失敗を次に生かすのは、難しい。
 特に男女関係はなおさらだ。
 
 
 
 映画では、ニーチェの言葉に続いてもう1つ、言葉が紹介される。
 「忘却は許すこと」(アレキサンダー・ポープ)
 
 2人は徐々に気づき始める。
 過ちは消せばいいってものじゃない、と。
 
 忘れ去るのではなく、乗り越えなければ、前進はない。
 そう、過去を捨てることでは何も生まれないのだ。
 
 つまり、ニーチェの言う「忘却」は、捨て去ることではなく、許すことだったのだ。
 
 今後もきっと、このカップルは大きな喧嘩をするだろう。
 だが、もう記憶消去には走らないはずだ。
 現実を受け入れ、乗り越えることこそが、成長へのステップだと学んだのだから。
 
 
 
 不器用な2人がそれに気づき、お互いに深く理解しあったところで、映画は終わる。
 
 「気持ちを変えて振り返ってごらん。
  気持ちが変われば世界も変わるから。」
 ベックのエンディング曲が心に響く。
 
 アレキサンダー・ポープはこうも言っている。
 「間違っていたと認めるのを決して恥じるべきではない。
 それは、言い換えれば、昨日よりも今日の方が賢くなったということだから」

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M One News 18-24           2018/12/03 カルロス・ゴーン②

 個人的には、ゴーン体制20年は長すぎたように思う。
 
 JALと日産を比べてみる。
 いずれも、技術力は高かったのに、官僚主義で組合が強かったため、経営危機に陥った。
 そして、前者は京セラ稲盛氏に、後者はルノー・ゴーン氏に助けを求め、いずれも大規模リストラを行い、業績をV字回復させた。
 
 異なるのはその後。
 稲森氏は次期経営陣にバトンタッチ、さっと身を引いたのに、ゴーン氏は君臨し続けた。
 
 入れ替わらない水は淀む。
 2014年の業績悪化の責任を志賀俊之氏に取らせて更迭(代取→取)。
 最近ではリコールの責任を西川廣人代取に押し付けたりと、自分の責任は棚上げ。
 
 そして、グローバルに行動するゴーン氏の出社は、当初こそ4割だったが、最近は月わずか数日だったという。
 それでも役員報酬は高止まりのまま。
 
 かつて松下幸之助氏は、諫言(かんげん)役として、ポケットマネーで1人雇っていたという話を聞いたことがある。
 自分が神になったように感じてしまうCEO病は、CEOなら誰しも免れ得ないが、松下幸之助氏の何とバランス感覚の優れていることよ。
 
 

 会社の今後の将来について考えてみよう。
 2017年の世界の販売台数は、右のとおり。
 
 現在、首位に肉薄している第2位グループなのだ。
 ルノーと日産は、開発・調達・生産拠点などをうまく補い合っている。 
 
 

 会社規模で比べると、日産がルノーを大きく凌駕している。
 
 
 
 
 

 ところが、ルノーと日産の資本関係はというと、まるで不平等条約。
 日産のルノー株15%の無議決権は仏国内法のためらしいが、不平等であることに変わりはない。
 
 
 
 日産としては、開発・調達・生産などで補完しあういい関係を維持したいが、資本関係によってルノーに吸収されるのは避けたいところ。
 
 
 
 西川氏はどう出るか。
 
 普通に考えれば、ゴーン氏とケリー氏を取締役から外すこと。
 それは株主総会でしかできない(一方、代表権剥奪は取締役会でできる)。
 しかし、筆頭株主ルノーが43%も所有していると、2位が数%程度では、プロキシー・ファイト(議決権争奪戦)は著しく分が悪い。
 
 いっそのこと、現在の株式15%を25%まで買い増しして、ルノーの議決権を無くしたいと考えているはずだ。
 25%まで買い増しできれば、ルノーの議決権を無くせるからだ(会308①)。
 そうすれば、平等な立場で交渉できる。
 
 ところが、株式の買い増しは、取締役会の専決事項として取締役会で決めなくてはならない(会362)。
 そして、日産自動車の取締役9人のうち4人がルノー出身者。
 残り5人は日本人だが、現時点でも取締役会で株式購入決議を行っていないのは、ルノーの息がかかっている人物がいるからか。
 それとも、ルノーと日産の間に何かしら契約があり、縛られているからか。
 
 ルノーの株主の15%は仏政府。
 株式比率が下がってきたとはいえ、元国営企業で、フランスを代表する企業。
 マクロン仏大統領の意欲ぶりを見る限り、何らかの圧力をかけてくるだろう。
 
 
 カルロス・ゴーン氏、そして日産自動車の行く末はどうなるのか。
 しばらくの間、目を離せない。

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M One News 18-23           2018/12/03 カルロス・ゴーン①

 日産自動車元CEOカルロス・ゴーン氏が2018/11/19に逮捕されてから早10日あまり。
 最初こそ情報が錯綜していたが、ようやく情報が整理されてきた。
 
 どうも、ルノーCEOの任期切れが間近に迫ったゴーン氏が、マクロン仏大統領と密約かなにかで、日産自動車をルノーに吸収する方向で動き出し、それを日々肌で感じて危機感を持った日産自動車と、2018/06/01に始まった司法取引で実績を上げて失地回復を目指したい検察庁の利害が一致し、電撃的な逮捕劇となったようだ。
 
 逮捕後の日産自動車代表取締役の西川(さいかわ)廣人氏の単独記者会見では異様感だけが漂っていたが、西川氏はゴーン・チルドレン筆頭らしい。
 記者会見を見ていた人なら、誰しも「クーデター」の文字が頭をよぎったと思うが、あながち誤っていなかったというわけだ。
 
 
 さて当初、極悪人のようにメディアでは報道されていたが、よくよく情報を整理してみると、役員報酬の単なる後払い。
 コンサルティング契約として、退任後に受け取る形だったとのこと。
 何のことはない、オーナー社長がよくやっていることではないか!
 
 
 メディア報道には注意する必要がある。
 
 「100億円の報酬を50億円に過少記載」と報道されていたが、この100億円は5年分。
 たとえば、年収500万円のサラリーマンが「2500万円の収入をもらっている」と言われたら、おかしいと思うだろう。
 
 また、傾きかけた会社を再建するにはリストラが必要だが、「人を首にしておいて報酬100億円ももらって」と嫉妬心満載で報道するのは、いやらしさにも程がある。
 本当に倒産してしまえば、現在時価総額4兆円を超える現在の日産自動車はなかったのだから。
 
 さらに、全世界に家を会社に買わせたというが、CEOなら全世界で「〇〇邸」「〇〇庵」などで業務使用するのはよくあること。
 
 
 
 とはいえ、無罪と無実は異なる。
 
 報酬の後払い契約は、取締役会を通さなかったそうだし、契約書を秘書室で極秘に管理していたことこそ、わかっていてやった証拠だ。
 業務使用で全世界に接客用に家を買うなら、ファンドやペーパーカンパニーを通さずに堂々と買うべきだ。
 姉へ業務実態のない契約で年1,200万円支払っていたことや、家族旅行の会社負担に至っては、言語道断。
 せこすぎる。
 
 
 金融商品取引法違反になるかどうかは、役務提供が過去分か将来分かの1点に絞られるだろう。
 
 過去の実績に対して、単に後払いにしたのなら、金商法違反であるし、脱税にもなる。
 そうではなく、不満だけれども(高額でいろいろ言われるのがイヤだから)報酬10億円に抑えて、退任後に業務委託契約で、つまり将来の役務提供の分としてもらうのなら、違反にならないし、脱税にもならない。
 
 お膳立てをしたグレッグ・ケリー前代表取締役は米国弁護士であり、お粗末な仕事をするとは考えづらいし、有価証券報告書不記載について金融庁に事前確認済みというニュースすらある。
 また、ゴーン氏やケリー氏は自身の弁護を米国の弁護士に依頼したそうだ。
 スター経営者ゆえ、海外からさまざまな横やりもあろう。
 検察庁の思惑通りにいくかどうかは不明だ。
 
 
 カルロス・ゴーン氏の経営者としての力量は、自他ともに認めるところ。
  ただ以前、ゴーン氏が日産のV字回復を成し遂げたときに、ゴーン氏を招いた塙義一元会長が「手法はありきたりだが、私が実施したら血を見た。ゴーンだからできた」と言っていたそうだ。
 思わせぶりな言い方だ。
 
 また、周囲の協力あっての話。
 贈答品を受け取ったり接待を受けたりしたら、始末書と誓約書を社員に書かせるなどコストカッターに徹する一方で、自分だけには甘くするのでは、社員がついてこまい。
 自分にだけ甘いゴーン氏の実態が白日の下にさらされたら、信奉していた社員が動揺するのは当然だろう。
 
 かつて村上龍がさまざまな成功者にインタビューする企画で、カルロス・ゴーンにだけはオーラを感じないというか、言っていることは間違っていないのだが、迫力というか面白みを感じないと発言していたことを、思い出す。

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M One News 18-22           2018/11/22 マイナンバー提供を拒否されたら?

 社員、士業、講師、大家などからのマイナンバー提供を拒否されたら、会社としてはどうすればいいでしょう?
 
 そうした場合の対処方法として、国税庁はFAQやガイドラインで明らかにしています。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/FAQ/gensen_qa.htm#a113
http://www.ppc.go.jp/legal/policy/answer/#q4-6
 
 そのポイントは、2点。
・義務であることを相手に伝え、提供を求めること。
・それでも拒否されたときは、経緯を記録しておくこと。

 
 経緯をメモしていないと、マイナンバー記載の無い理由が、相手の拒否にあるのか、会社側の単なる紛失なのかがわかりません。
 つまり、説明責任+記録が求められるということです。
 
 当分の間、税務署提出書類にマイナンバー記載が無くても、書類の受け付けはされるようですが、いずれ、マイナンバー提供拒否に何らかの理由がある、つまり、叩けばホコリが出ると思われ、(マイナンバー未記載者に対して)集中的に税務調査されるでしょう。
 とばっちりを受けないためにも、会社側も記録を残しておくことが大事です。
 
 具体的には、
・拒否された日
・義務であることを説明した日時・方法・人
・それでも拒否された日
などを記録しておくといいでしょう。


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M One News 18-21           2018/11/22 報酬等支払先の法定調書手続②

【Step 2】ピックアップした報酬等支払先へマイナンバー書類送付
 M One News 16-12「マイナンバー収集時の本人確認」で、社員の本人確認手続きを説明しました。
 報酬等支払先も、同様の手続きを行わなくてはなりません。
 
 異なる点は、毎日顔を合わせる社員とは違って、直接、会う機会が少ないという点。
 必然的に郵送等にならざるを得ないため、時間がかかります。
 手続きを誤ってしまうと面倒なため、郵送で収集する場合と、E-mailで収集する場合とで、必要書類やそのポイントをまとめました。

 社員同様、①②③のどれかを送っていただく必要があります。
 住民票にはマイナンバーが記載されていなければなりません。
 そして、その返送には信書便を利用するなどの、リスク対応策を講じる必要があります。
 
 
 信書便は普通郵便・書留・レターパックなどが該当し、ゆうパック・宅急便は信書便にはあたりません。
 コストがかかりますが、会社は「個人番号関係事務実施者」として重い責任が課されているため、やむを得ないでしょう。
 信書便利用は当然として、実務上、追跡機能も欲しいため、窓口扱いになる書留よりも、投函で済むレターパックがお勧めです。
 
 
 返送してもらう書類は、番号確認書類+身元確認書類。
 ただ、以下の書式で送付すれば、身元確認書類だけは省略できるものとされています。

 住民票にはマイナンバーが記載されていなければなりません。
 また、添付ファイルにパスワードをかけ、添付ファイルE-mailとパスワード通知E-mailを分けるなどのリスク対応を行う必要があります。
 パスワードをかけられない、いわゆる「写メ」はダメということです。
 一見、郵送よりも簡単に思えますが、撮った写真にパスワードをかけるのは、ワザが必要なため、難しそうです。
 
 
 詳しくは、「Q&A中小企業のためのマイナンバー制度実務対応ガイドブック」Q10~11を参照してください。
 個人的見解ですが、郵送による収集が無難でしょう。
 さらに、郵送でのやり取りに時間がかかることを考えると(1回でのやり取りできれいに終わるとは思えませんものね)、11/末までに発送できればいいですね。

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M One News 18-20           2018/11/22 報酬等支払先の法定調書手続①

 M One News 16-16「年末調整よりも法定調書の方が大変です」で、法定調書関係の処理量がかなり増えるため、準備に早めに取りかかった方がよいことをお伝えしました。
その概略は、以下のとおりとなります。
 
【Step 1】 マイナンバー収集先のピックアップ
【Step 2】 ピックアップした報酬等支払先へマイナンバー書類送付
【Step 3】 報酬等支払先からマイナンバー入手
【Step 4】 支払先ごとに1/1~12/31の金額集計
【Step 5】 支払調書作成
【Step 6】 法定調書合計表提出
 
 
【Step 1】マイナンバー収集先のピックアップ
一般的には、こちら。

   内容           収集先  金額
報酬、講師謝礼など税理士、社会保険労務士、弁護士、司法書士、講師など 年5万円超
不動産家賃大家年15万円超
不動産仲介手数料不動産屋年15万円超
株主配当金株主年10万円超

 
詳しくはこちら。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2017/pdf/13.pdf
 
 

上記金額以下の場合のマイナンバー収集は禁止なので、ご注意あれ。

                                             → 目次へ戻る

M One News 18-18           2018/11/07 年末調整は早めの準備を

  今年の年末調整におけるトピックは主に3点あります。

(1)税制改正
 共働きを支援しようと、2017年税制改正で、年収103万円の壁が150万円に広げる一方、税収確保のため、世帯主本人の所得制限がなされたのは、既にお知らせのとおり。
 M One News No.17-01「税制改正:配偶者控除等の見直し①」
 M One News No.17-02「税制改正:配偶者控除等の見直し②」
 それにより、毎月の給与源泉税の計算方法も変わっています。 
 M One News No.17-06「税制改正:給与源泉税の計算方法変更」
 
 つまり、世帯主の配偶者控除・配偶者特別控除は、世帯主本人の所得と配偶者の所得の組み合わせで決まるのです。
 その数、なんと31通り!
 したがって、本人の所得はもちろん、配偶者の所得をできるだけ正確に把握することが重要になってきます。
  
 
(2)年末調整配布資料

 (1)のため、年末調整資料も変更になりました。

  2種類から3種類に増えたのです。
 単に増えただけではありません。もっともハードルが高いのは配偶者控除等申告書。
 配偶者の所得を5万円単位で把握しなければなりません(M One News No.17-06「税制改正:給与源泉税の計算方法変更P.2の表参照)。
 どうりで31通りもあるはずです。
 
 
(3)年末調整時期
 (2)の配偶者の所得は、1年経過していない当初は見積もりによらざるを得ません。そのため、毎月の給与源泉税の計算上、見積りで行っています。
 そしてどうやら年末調整も、見積りで行わなければならないことになりそうです。
 なぜなら、12月はもちろん1月に行う年末調整では配偶者の正確な所得金額が必要となるからです。
 パートに出ている配偶者の所得は通常、勤務先の源泉徴収票で把握しますが、その源泉徴収票の発行時期は翌1月末までとされています。
 ところが、年末調整後に税務署に提出する法定調書提出期限も、翌1月末。
 全く同時期なのです。

  また、年末調整計算開始までに源泉徴収票が、すべての配偶者の手元に届くとはとても思えません。
 面倒だからと自分で確定申告してもらおうとしても、年末調整義務が会社にはあります。
 あちら立てればこちらが立たぬ。明らかに制度設計ミスです。
 
 今後は、実務的配慮として何かしらのアナウンスが国税庁から出てくると思いますが、それを待たずに、会社の方針を決めておいたほうがいいでしょう。
 
 例えば、
・法定調書提出期限1月末を守るのなら、年末調整に使用する配偶者所得は見積額にならざるを得ないが、年末調整資料提出期限をいつにするのか?
・その場合、期限後提出の年末調整資料は処理せず、自分で確定申告を行ってもらうのか?
・法定調書提出期限1月末を守らないのなら、年末調整資料提出期限をいつにするか?
・その場合、源泉徴収票発行遅れはどの程度許されそうか?
 ・・・など。
 
 方針をいずれに決定するにせよ、早めの準備を始めるに越したことはなさそうです。

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M One News 18-15           2018/07/26 西日本豪雨等への対応

  「平成30年7月豪雨」により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
国税庁より、今回の豪雨により被害を受けた方々への支援措置として「平成30年7月豪雨に関するお知らせ」が発表されました。被災された皆様やご関係の方々は内容をご確認の上、ぜひご活用いただければと思います。
 
 
●国税庁「平成30年7月豪雨に関するお知らせ」内容
・国税に関する申告、申請、納付等の期限の延長
・財産に相当の損失を受けた場合の納税の猶予
・災害発生後に期限の到来する予定納税や給与所得者の源泉徴収税額の減額、徴収猶予
・住宅や家財などに損害を受けた場合の所得税の軽減
・消費税簡易課税制度の適用(不適用)に関する特例
 
詳細は以下の国税庁HPをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0709.htm

 
 
 また、中小企業庁からも、被災された中小企業の皆様が一刻も早く事業の復旧・再開ができるよう、支援策を検討し、その内容をまとめた「被災中小企業者等支援策ガイドブック」が発表されています。
 
 ガイドブックの中では、各種融資の実施や、借入金の返済猶予への対応、資金繰りに関する相談会など、事業の継続、再開に向けた経営全般に関する支援策が記載されております。詳細は以下の中小企業庁のHPをご参照ください。
http://www.chusho.meti.go.jp/201807gouu/ 
 
 被災された皆様が、一日も早く普段の生活を取り戻されることを、心よりお祈り申し上げます。

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M One News 18-14           2018/06/15 紀州のドン・ファン③

  今回は、愛犬イブの話。
 野崎幸助氏が亡くなった日が18/05/24。溺愛されていた愛犬イブが亡くなったのは、わずか18日前の18/05/06。
 事件との関りを調査するため、現在、遺骸を掘り起こし、外部の専門機関で検査しているという。
 
 
 野崎氏は愛犬イブに財産を全て遺したいとも言っていたと聞くが、法律的には犬は人間ではないので、財産をもらえない。
 「信託」という形でなら遺すことができる。遺言のようなもので、ペット信託とも言われる。
 つまり、「50億円をイブの世話に使ってくれ。世話人は〇〇。もしイブが亡くなったら、残りの財産はこう処理を頼む」と。
 遺言と異なるのは、1回目の遺す相手を指定できるだけでなく、2回目も指定できる点だ。その意味で、遺言よりも進んでいると言えよう。
 
 
 とはいえ、信託でも遺留分は考慮しなければならない。
 つまり、妻Sさんと兄弟は最低取り分として、法定相続割合の半分が保証されているから、妻Sさんは19億円、兄弟は1人1億円は最低でも受け取ることができる。
 50億円の半分は遺族に、半分は愛犬イブに遺す信託を設定できたということだ。
 
 
 とはいえ、そのイブも没。
 もうすぐ解剖結果が出るだろう。その結果で捜査も進展するに違いない。
 これで犯人が判明すれば、火葬ではなく土葬にこだわった野崎氏の報いた一矢となるかもしれない。

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M One News 18-13           2018/06/15 紀州のドン・ファン②

  M One News 18-12「トピック:紀州のドン・ファン①」では、妻Sさんが犯人だった場合は相続権がなくなると書いたが、それは刑が確定したときの話。
 逮捕・起訴されても、裁判を経ないと刑が確定しないから、長期化するのは容易に想像できよう。
 
 和歌山毒物カレー事件では、1998年に逮捕・起訴されてから2009年に最高裁で死刑が確定するまで、11年もの年月がかかっている。
 今回も同じで、この間、いわば宙ぶらりん状態ということになる。

  今度は、相続税がどうなるかを見てみよう。
 
 妻Sさんは38億円、兄弟6人は1人2億円を相続する。
 そうすると、妻Sさんの相続税は約20億円、兄弟は1人約6,500万円と計算される。
 この相続税は、野崎幸助氏の死亡日18/05/24から10ヶ月以内、つまり19/03/24までに納付しなければならない。
 
 
 20億円納付としても38億円もらうんだからいいでしょ、と思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。
 
 銀行の立場に立って考えてほしい。
 相続人1人からの引出し要請に銀行が安易に応じてしまうと、他の相続人から後日文句を言われてしまうかもしれない。そこで、全員の了承を得たうえで、引き出しに応じることにしているのだ。
 通夜・告別式で亡くなった時の状況を親族にロクに説明もせず、スマホばかりいじっていて、親族が声を荒げたとか、不謹慎ないろいろな話が聞こえてくるから、親族が銀行への用紙に全員すんなり押印するとは思えない。
 
 
 とはいえ、相続税は連帯債務。
 つまり、妻Sさんが相続税を納付しないと、兄弟6人が納付しなければならない。感情的には許せなくても、最終的には押印しなければならないだろう。
 銀行も巻き込まれるのを避けたいから引き出しに簡単に応じることはないと思うが、書類がそろっていれば拒否できない。
 
 
 
 また、遺産50億円がすべてキャッシュとは限らない。
 不動産かもしれないし、所有している会社の株式かもしれない。現金化にも時間がかかるから、そうゆっくりとはできないはずだ。
 
 相続税納付期限の方は最初から決まっているから、現金化に時間がかかり、10ヶ月以内に納税できないとしよう。
 すると、年8.9%の延滞税がかかる。
 
 妻Sさんの相続税は20億円だから、年1.8億円の、いわば利息がかかることになる。
 兄弟ですら、1人あたりの相続税6,500万円の利息は約600万円にものぼる。
 
 
 実務家が「もめると損ばかり」と言う意味はここにあるが、はたしてすんなり納税資金を用意できるかどうか、この点からも見ものだ。
 
 
 
 次回は愛犬イブについて。

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M One News 18-12           2018/06/15 紀州のドン・ファン①

  現在、耳目を集めている、和歌山の実業家、野崎幸助氏(77歳)が18/05/24に急逝した事件。
 不審な点が多いことから、警察が捜査に乗り出し、死因は急性覚醒剤中毒、殺人事件として捜査されている。
 野崎氏の遺産は50億円とも言われ、55歳年下の22歳の自称モデルSさんと3ヶ月前に結婚したばかり。
 事件の臭いがプンプンするが、和歌山県警の捜査ではいまだに決定的証拠があがっていないようだ。


 和歌山県警と言えば、直接証拠が乏しいまま状況証拠だけで逮捕・起訴せざるを得なかった1998年の毒物カレー事件を想い起こさせる。
 真相究明を今度こそと雪辱を期す県警は、第一発見者の妻Sさんと家政婦Tさんをウソ発見器にかけたり、会社の従業員まで尿検査や粘膜採取したりと、やっきになっている。
 野崎邸に設置されている38台もの監視カメラに残っている映像も調べているだろう。
にもかかわらず、捜査があまり進んでいないとは本当だろうか。


 それはともかく、この事件を相続の観点から見てみよう。
 相続財産50億円はどうなるのか。

 子供もおらず、遺言もないため、法定相続割合どおり、50億円の4分の3(38億円)を妻が、4分の1(12億円)を兄弟6人が相続することになる。
 妻が多額なのはもちろん、兄弟ですら1人2億円にもなる。 

   仮に妻Sさんが犯人とすると、相続人欠格となり、相続権を失う(民法891①)。
 その場合、兄弟6人が50億円を相続することになる。1人あたりの相続財産が、2億円から8億円と4倍になるわけだ。 

   殺人動機に十分と思うがいかがだろう?
 つまり、妻Sさんをそそのかすか、あるいは妻Sさんが容疑者になるように仕組んだ兄弟が、もしいたとしたら・・・。
 ミステリー小説はだしだが、県警も当然にそう考え、慎重に捜査しているに違いない。


 一方、妻Sさんがもし妊娠していたら、兄弟には一銭も行かず、Sさんが半分相続、Sさんの子供が半分を相続できることになる。 

   妻Sさんが犯人かどうか、他に真犯人がいるかどうか、妻Sさんが妊娠しているかどうかで、財産の行方は大きく変わる。
 当分の間、目を離せない。 

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M One News 18-11           2018/03/22 青色申告特別控除の見直し

 給与所得控除・公的年金等控除引き下げ(M One News 18-08M One News 18-09)に伴う所得控除調整です。
 そのポイントはこちら。

 他も合わせてまとめると、このとおりになります。

 freeeやMFクラウド等のクラウド会計ソフトのほとんどは、電子帳簿には対応していません。
 
 「えっ?」と思う人も多いでしょうが、電子帳簿保存法で規定する「電子帳簿」には、「帳簿」(総勘定元帳・仕訳帳)と、その関係書類の「領収書等」の2種類があり、クラウドソフトで対応しているのは後者だけなのです。
 クラウドソフト会社のHPを見ても、領収書等のスキャナー保存には大々的にアピールしていますが、帳簿の電子保存については記載がなく、注意が必要です。
 したがって、freeeやMFクラウドを使用している場合、総勘定元帳・仕訳帳を紙印刷し、7年間保存する必要があります。
 
 
 そして、基礎控除改正(M One News 18-07)とトータルで見ると、以下のとおりとなります。

 つまり、一見増税に見えるけれども、増税どころか、電子帳簿保存 or e-Tax申告している人を優遇するという減税なのです。

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M One News 18-10           2018/03/23 所得控除調整による配慮

 給与所得控除・公的年金等控除引き下げ(M One News 18-08M One News 18-09)に伴う所得控除調整です。
 そのポイントはこちら。

  「給与年収850万円超の子育て世帯等」とは、給与等収入850万円超で次に該当する人を言います。
 ・22歳以下の扶養親族がいる
 ・本人 or 扶養親族が特別障害者である
 
 給与等収入が1,000万円以下までは増税の影響をゼロ、1,000万円超は増税の影響を緩和するよう調整するというもので、その調整内容は、(給与等収入-850万円)×10%(Max 15万円)を給与所得等から控除することで行います。
 
 子育て世帯等はいろいろ支出もあり負担も大きいことから、今回の増税にあたって配慮したということです。

                                             → 目次へ戻る

M One News 18-09           2018/03/22 年金控除引き下げ

 続いて、公的年金等控除。
 改正ポイントはこちら。

 それに伴い、公的年金の速算表は大きく変わります。

 ご覧のとおり、非常に複雑になります。
 基礎控除10万円引き上げ(M One News 18-07)と相殺され、実質的に影響ないのは給与所得控除と同様(M One News 18-08)ですが、異なるのは、公的年金収入以外の所得が多額の人は公的年金控除が引き下げとなる点です。
 
 年金収入は高齢者の生活基盤となるために控除を多めにとる配慮をしているのですが、年金収入以外に所得が多い人はその配慮を減らしたということです。

                                             → 目次へ戻る

M One News 18-08           2018/03/22 給与所得控除引き下げ

 次は、給与所得控除です。
 その改正のポイントはこちら。

 より具体的に給与所得控除を見てみましょう。

 上記改正ポイントでは、給与所得控除10万円引き下げで「増税」としましたが、基礎控除10万円引き上げ(M One News 18-07)と相殺され、実質的には影響ありません。
 
 影響があるのは、年収850万円~1,000万円のサラリーマンですが、支出がかさみがちな子育て世帯等には別途、配慮されています(M One News 18-10)。

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M One News 18-07           2018/03/22 基礎控除引き上げ

 昨年の今頃の国会は籠池氏問題で紛糾していましたが、その流れで今年は、元国税庁長官である佐川宣寿氏の証人喚問まで事態が進んでいます。
 証言の内容によっては、麻生太郎財務相辞任どころか内閣も飛ぶだけに、例年3月下旬に成立する税制改正法案はどうなるのか、目が離せません。
 
 税制改正のうち、所得税関連で大きな目玉が所得控除です。
 多様な働き方に対応するため、給与所得控除・年金控除から基礎控除に10万円振り替え、そのうえで、税制が本来持つ所得再分配機能を強化し、高所得者層に増税するというものです。
 
 その所得控除の主な改正内容を順次、説明していきます。
 
 
 まずは、基礎控除。
 ポイントはこちら。

 具体的には以下のように変わります。

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M One News 18-06           2018/01/09 国税庁がビットコイン長者のリストアップを開始

 先日、M One News 18-04「仮想通貨高騰と税金」でお伝えしたとおり、「儲けたと公言している億り人は大丈夫か?」と思っていたら、新年早々、国税庁がビットコイン長者のリストアップに着手したとのニュースが流れてきた。

 
 時価総額1位のビットコインは1年間で20倍、2位のリップルは200倍となれば、売却益の申告漏れについて国税庁が放っておくはずがない。
 東京と大阪の国税局ネット商取引専門チームが分析し、重点管理富裕層プロジェクトチーム(富裕層PT)にデータを提供、データベース化を進め、追跡管理体制を取ることになると思われる。
 
 富裕層PTは、富裕層による過度な節税や課税回避への監視を強めるため、2014/07に東京・大阪・名古屋の3国税局に設置された約50人のチーム。
 資産家本人はもちろん、親族や関連企業・団体の国内外での資産の動きを組織的に監視・追跡し、資産の把握と申告の適正性をチェックするもの。
 数年かけてノウハウの蓄積を図ることができたことから、2017/07には増員して全国12国税局に展開・設置された。
 2017/07以降、既に一部の取引業者からデータを入手し始めているという。
 
 仮想通貨取引はインターネットで完結するから税逃れができそうだ、と勘違いした人は多かったのではないだろうか。
 従来の情報収集手段では、確かに難しかったろう。
 だが、ブロックチェーンは、改ざんができにくい信頼性の高い技術。国税庁はそれを逆手に使えるというワケだ。
 
 特に、資金決済法で仮想通貨を「通貨」と認め、取り扱い業者を許可制とし、本人確認を義務化したから、なおさらのこと。
 したがって、取引所さえ押さえれば、首根っこをおさえることができることになる。
 
 法定調書の面ではまだ義務化されていないが、取引所に協力を求めれば、データを入手することができる。
 正当な税務調査手続を行えば、それも可能だ。
 財産債務調書も、その趣旨上、当然ながら記載が必要。
 
 以上の情報を、2018/02~03申告の確定申告書と照合。
 不審な点があれば、調査に入り、追徴課税や脱税容疑での立件が検討されることになるだろう。
 
 ただ、海外では「通貨」と認めていない国も多く(日本は仮想通貨先進国なのだ!)、100ヶ国以上との情報交換制度の本格運用が始まらないと、抜け穴になってしまう。
 懸念されるところだ。

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M One News 18-05           2017/12/27 財産債務調書

  年末時点で3億円以上の財産 or 1億円以上の上場株式等を持っている人は、財産債務調書を税務署に提出しなければならないという制度で、2015年分の申告から適用されている。
 
 概要は以下のとおり。
 確定申告書を提出する人のうち、総所得等が2000万円超ある人で、年末時点で財産3億円以上 or 株式等1億円以上の人は、翌3/15までに財産債務調書を提出しなければならない。

  詳しくはこちら。
 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/zaisan_saimu/index.htm
 
 これは、あまりに申告漏れが多いことから、収入の申告が正確かどうかを、資産残高からもチェックすることで、所得税・相続税の申告漏れを防ごうとするもの。
 
 対象者を富裕層にしぼったため、従来の「財産及び債務の明細書」に代わるものと言っていいだろう。
 提出しないこと自体にはペナルティは無いのは同じだが、申告漏れが生じた場合はペナルティがプラスされるのが異なるところ。
 質問調査権も税務署に認められているし、拒否や妨害をすると、1年以下の懲役 or 50万円以下の罰金が課されるので、そのリスクは十分理解しておくことが必要だ。
 
 
 では、財産の評価はどうするのか。
【評価のポイント】
 ・12/31時点の時価
 ・「財産」は、海外も含む
 ・「財産」の不動産は、固定資産税評価額で評価
 ・「株式等」の未上場株式は、簿価純資産で評価
 ・「財産」には、生命保険も含む
 ・「財産」には、仮想通貨も含む
 
 相続税の評価でないのは救われるところだが、実務上、集計が毎年必要になるのが面倒な点である。
 特に最近は仮想通貨が高騰しているから、きちんと記載を忘れないようにしたい。
 通貨なので、現預金欄に記載することになると思われる。
 
 トピック的な話題は税務署も意識するから、記載を安易にパスすると、後からペナルティーがかかってくることになりかねない。
 マイナンバーも導入されたし、ペナルティにつながるので、資産管理体制を整えた方がいいだろう(というより、会計士の立場からすると、資産管理は必須なのだが・・・)。

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M One News 18-04           2017/12/27 仮想通貨高騰と税金

 最近、何かとニュースを聞く『仮想通貨』。
 ビットコインが代表格として取り上げられているが、1年で約20倍に値上がりと、その激しい乱高下ぶりから、投機の印象が強い。
 
 しかし、非中央集権的な分散型のため、改ざんしにくく信頼性が高い仕組み(ブロックチェーン)は革新的だ。
 一般的に言われるメリットは、以下のとおり。
 ・中央機関に依存していない
 ・信頼性が元来高い仕組みのため、送金手数料が安くすむ
 
 ただ一方で、乱高下する限り、通貨として不適格であるし、その優れた送金特性が価格高騰によって失われてしまっている。
 例えば、国内最大手の取引所ビットフライヤーの場合、送金手数料は0.0004 BTCだったので、17/12/23現在のビットコイン価格約170万円だと680円。
 これは、銀行の国内他行送金手数料を上回るレベルだ。
 17/07/01時点では28万円だったから、送金手数料は112円で済んだのに・・・。
 
 つまり、ビットコイン価格が上がれば上がるほど、送金手段としては割高になってしまう構図なのだ。
 そこにさらなる追い打ち。
 17/12/24付で送金手数料は0.0015 BTCと約4倍に値上がってしまった(ビットフライヤーの場合)。
 
 取引処理が大量に滞っているために台帳に書き込む処理(マイニング)をするマイナー(採掘業者)へのインセンティブをアップさせたのだが、これは同時に、通貨としての利用がさらに遠のくことを意味する。
 結果、利用目的よりも投機目的で所有する人が多くなっているのが現状だ。
 
 
 そんな仮想通貨の取扱いは、国によってまちまちだ。
 中国や韓国では取扱い禁止、韓国では通貨とすら認められていない。
 オーストラリアでは通貨ではないが、財産価値があるものとされている。
 
 日本では2017年に明確化された。
 資金決済法で通貨として認め、財産価値ありとされたのだ。
 
 具体的な取り扱いとして、(通貨なので)消費税は非課税、所得税は売却時・支払手段として使用時に課税される。
 海外と異なるのは、海外では仮想通貨間で交換しても課税されないが、日本では交換時も課税される点。
 
 そして、税率はMax 55%。
 雑所得扱いで総合課税となる。
 
 これは、支払手段としても使用できることから、譲渡所得ではなく、雑所得にされたのであろう。
 所有者としては、価格が上がるのはうれしいものの、だからといって売却すると半分未満しか残らない。
 
 逆に暴落して購入金額よりもマイナスになると、損は切り捨てになってしまう。
 「利食いのタイミングをいつにするか」という贅沢な悩みを抱える人も多いのではないだろうか。
 
 2017年の確定申告で注意しなければならないのは、財産価値があるとされたため、相続財産として相続税も課税されるし、財産債務調書に記載が必要ということだ(国内財産にあたるため、国外財産調書には記載不要)。
 通貨なので、現預金欄に記載することになると思われる。
 調書不記載についてペナルティーはないが、申告漏れがあるとペナルティーが加重されるので、気をつけたい。
 
 
 現在、国税庁は富裕層プロジェクトチームを全国展開して、富裕層を重点管理している。
 国税庁にとっては「宝の山」だが、納税者側からは「ブラックリスト」。
 このリストに載ってしまうと、なかなか外されることはない。
 
 国税庁が調査しがいのあるプロジェクトとして特別に意識しているのは、パナマ文書、パラダイス文書ときて、第3弾がこの仮想通貨高騰だろう。
 国税庁がにんまりして腕まくりする様子が目に浮かぶ。
 
 従来からの富裕層は派手な行動をすることなく控えめにしているが、心配なのは「にわか金持ち」。
 『億り人』としてTVに顔をさらす「にわか金持ち」を見るたびに、後でツケが来るだろうに、という老婆心を禁じ得ない。

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M One News 18-03           2018/01/10 セルフメディケーション税制

 医療費控除提出書類と並んで、2017年度税制改正で新設されたのが、セルフメディケーション税制(2017年分申告から適用)。
 
 従来の医療費控除が「治療」を主な目的にするのに対して、こちらの目的は「予防」。
 つまり、健康維持(=病気予防)に取り組む人の医薬品購入を、税制面で優遇しようというもの。
 クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life。生活の質)を充実させるだけでなく、国の医療費の膨張を抑える狙いがある。
 
 具体的には、健康診断・メタボ検診・人間ドック・予防接種など自助努力をしている人は、同一生計の家族の市販薬代の金額が年12,000円を超えた場合、その超えた金額の所得控除を受けることができる(Max 88,000円)。
 
 対象市販薬の品目一覧はこちら。
 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000333659.pdf
 
 見てもらえればわかるが、ひとつひとつ該当するかを探すのはとても面倒だ。
 したがって、実際には、ドラッグストアでの購入時に、薬のパッケージに右のマークがあるかどうかで、判断することになろう。
 
 健康を維持し、病気を予防するという考え方は立派だが、実務上、集計が簡単であることも大事なポイント。
 
 具体的には、確定申告における注意点は、通常の医療費控除との選択適用という点だ。
 つまり、通常の医療費控除の方がトクなのか、セルフメディケーション控除の方がトクなのかをシミュレーションして、どちらを適用するかを判断する必要がある。

 当事務所では、どちらの適用が有利かシミュレーションできるよう、また、明細書も自動作成するよう、いずれExcelファイルを提供する予定だ。

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M One News 18-02           2017/12/27 医療費控除の改正

 明細書を提出する代わりに領収書は提出不要。
 その代わり、いつでも税務署に提示できるよう、領収書原本を5年間保存しておく必要があるというもの。
 
 これは実務上、非常な『改悪』だ。
 何が『改悪』かといぶかる向きもあるかもしれないが、従来は領収書の合計金額を出すだけでよかったのに対し、明細書には、治療を受けた人の名前(同一生計の家族も含むため)・病院や薬局などの支払先・金額を記載しなければならない。
 つまり、従来なら電卓で足し上げるだけでよかったのに、明細書だと一つひとつ記載しなければならず、手間が増えるということだ。記載しないと明細書にならないからだ。
 
 もっとも、健康保険組合加入者は、組合からの通知書で明細書の代わりになるので、組合加入者は従来よりも楽になろう。
 
 問題は、国民健康保険に加入している高齢者だ。
 ただでさえ病気がちで領収書が多いのに、Excelが使えないとしたら・・・。
 
 3年間(2017~2019年分の申告)は、従来どおりの領収書提出でもいいのだが、その間に健康になっておけ、ということか。
 いやはやホント、健康に勝るものはありませぬ。

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M One News 18-01           2017/12/26 天網恢恢 疎にして漏らさず?

 『天網恢恢(てんもうかいかい)、疎(そ)にして漏(も)らさず』。
 
 「天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。
 悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ」(故事ことわざ辞典)
 
 
 最近、脱税摘発事件をよく耳にするようになった。
 コンプライアンス意識が高まっている社会風潮や、内部通報制度の整備だけでなく、税務調査が広く浅くというより、怪しいものに対して集中的に行われる方向に変わっているのが、一因だろう。
 また、支払調書を含めた情報収集精度が上がってきているのも、影響しているのに違いない。
 
 その中で、情報連携の本格運用が2017/11/13 に始まったマイナンバー制度は、3年目に突入する。
 もう少し具体的に言うと、2018/01/01 からマイナンバーが預金口座とひもつきになるのだ。
 
 正確な資産把握を行うのが、国税庁の目的(=納税者のデメリット)。
 マイナンバー提供は任意だから、イヤであれば拒否できるが、問題は海外。
 
 というのは、マネーロンダリング防止や税収確保といった観点から、経済協力開発機構(OECD)が策定した共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)が2018/01/01 からスタートする。
 これはタックスヘイブン(軽課税国)を含む100 以上の国や地域間における自動的情報交換制度で、銀行・証券会社・保険会社・信託の口座を対象とし、納税者の名前・住所・納税者番号・残高・利子配当等を電子ファイルで提供しあうというもの。
 
 この納税者番号が日本ではマイナンバーにあたる。
 つまりマイナンバー提供は、日本では任意でも海外では義務なのだ。
 
 そして例えば、シンガポールに口座を持っていると、2017/12/末の情報が2018/09 までに国税庁に送付されてくる。
 
 集計が面倒で申告をパスする場合はもちろん、パスワード失念等でログインできなければ、本人は金額すら把握できず、もちろん申告もできない。
 国内利子の20%課税とは異なり、海外利子はMax 55%課税だから、申告しなければ、期限後のペナルティも含めると、ほとんど手取りが残らなかった、なんて話になってしまう。
 
 
 また、2017/01/01 から海外で口座開設時にマイナンバーを求められるようになり、困惑するケースが続発している。
 日本人の感覚からすると、「日本ではマイナンバー提供は任意なのに、なぜ海外で提供しなければならないのか」と思うだろうが、海外では義務なのだから、提供しないと口座を開設してもらえない。
 
 海外に渡航する場合にマイナンバーを携える人はまずいないから、もし家族が日本にいて手伝ってもらえなければ、口座開設はできないことになってしまう。
 
 CRSにはタックスヘイブンで有名なケイマン諸島・マン島やスイスが入っている一方、米国は加盟していない。
 
 そのため、一部の富裕層に米国に資産を移す動きも出始めているが、国税庁は「米国にも情報交換を要請していく」としているから、安易な対応では税務調査のきっかけになるので、気をつけた方がいいだろう。
 
 何しろ、富裕層に調査に入りたくてしょうがないのだから。不利になるきっかけを自ら与えるのはスマートな人のやることではない。
 
 マイナンバーの本格運用開始で、国税庁は「天網恢恢、疎にして漏らさず」と呵々大笑しているだろうが、ジョージ・オーウェルが「1984 年」で描いた情報管理社会が身近に迫っているような危惧を覚えるのは、考えすぎだろうか。

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M One News 17-12           2017/12/26 個人事業主の税務調査のポイント

 税務調査が厳しくなっている。
 いままでは無事通っていたから大丈夫だろう、儲かっていないから、ウチは小さいから、というのは早計だ。
 
 税務署員のお目こぼしレベルが減っているうえ、「このくらいならいいだろう」と少額で始まったいい加減な計上が毎年少しずつ多くなっていくのは、よく知られた人間の心理でもある。
 早くても数年後の税務調査時には、金額が多額になっているため、どんなにお目こぼししてくれる税務署員でも、見過ごせなくなってしまうのだ。
 
 7年ぶりに税務調査に入られたA氏のケース。
 家族の外食費はもちろん、息子の学費や小遣いまで経費で計上していた。
 本人もわかっていたはずなのに、「少しぐらいならいいと思って」とは本人の弁。
 結局、何も反論できず、ペナルティも含め、数百万円の納税になってしまったのだ。。
 
 ぜひ皆さんにはくれぐれもそんなことが無いようにしていただきたい。
 特に注意しなければならないポイントを以下にまとめた。
 参考にしてほしい。
 
(1)自宅の事業割合
 店舗がある人はともかく、自宅がオフィスと兼用になっている場合、床面積基準で事業割合を算定するのが原則。
 「ウチはよく使うから」と多く計上しようとしても、まず通らない。
 自宅で打合せをするからと、(例えば)5割計上しようとしても、「では、週何回、来客があるのですか? 来客はまるまる1日ですか?」と突っ込んでくるだろう。
 本当に打合せしているのならまだしも、生活感丸出しだと、調査官が家に来れば一目瞭然。たちまちバレてしまう。
 そうすると、家賃、水道光熱費、損害保険料、固定資産税、減価償却費などが否認され、影響は大きい。
 
 
(2)車の事業割合
 そもそも、法人でない個人が、車を経費計上するのは難しい。
 もちろん、利用している部分は落とせるのだが、逆に言えば、利用している部分しか落とせない。
 事業利用が前提の法人所有の車とは、ワケが違う。
 事業利用が前提でない場合に、事業利用を立証するのは、それなりの努力が求められるということだ。
 
 特に、副業しているサラリーマンが通勤で車を利用している場合は、車経費はおおむね走行距離に比例すると考えられるから、経費計上は少額になるはずだ。
 それを、一律に(例えば)80%計上するのは無理があろう。
 したがって、実態に応じて、毎年、事業割合を検討する必要がある。
 
 
(3)事業関連性
 事業である以上、売上をあげるために経費を使うのが当然だが、そこには何らかの必然性があるはず。
 プライベートとの境目があいまいなグレーゾーンは、あいまいが故に、目をつけられやすい。
 特に、帳簿の摘要で「消耗品」とか「備品代」は、ウソをつきたくない人間の心理が表れており、言わば「逃げている」状態。
 本当に事業に利用しているなら、もっと具体的な商品名を記入するからだ。
 プロの税務署員なら、見逃すはずはない。それだけを集中的にチェックするベテラン調査官もいるほどだ。
 
 
(4)帳簿の摘要
 (3)は摘要に入力あっての話。
 何も入力されていなければ、もちろん、それ以前の問題だ。
 「帳簿」は日付・取引先名・内容・金額が要件とされており、欠けていると、「帳簿」とは言えない。
 調査官がやってきても、そんな帳簿で効率的な税務調査などできるはずもなく、すべて否認されるか、整理し直しを求められることになる。
 結局、1日で終わるはずが、数日~数週間かかることも多い。
 
 
 また、統計データを利用して、税務調査先がピックアップされるようになった。
 したがって、各業種の利益率からかけ離れていると、調査されやすい。
 「赤字だから調査されない」のは、過去の話ということだ。
 かつては、税理士のサインがあれば、よほど目を付けられていないと、税務調査などなかった。
 
 しかし今では、おかしなところがあれば、調査される。
 調査されると、時間・労力を使うだけでなく、精神的にも良くない。
 気を付けたいところだ。

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M One News 17-11           2017/11/24 給与源泉税の計算方法変更②

 M One News 17-06「税制改正:給与源泉税の計算方法変更」でお知らせしたとおり、2018/01支給分の給与から、配偶者の「扶養」の概念が変わることで、源泉所得税の計算方法が変更になります。
 そのため、扶養控除等申告書の形式も、2017年分と2018年分とで異なっています。
 従来は、2018年分の扶養控除等申告書への記入内容で2017年分の年末調整を行っていた会社も、2017年分の扶養控除等申告書と2018年分の扶養控除等申告書の2枚を配布せざるを得ないケースが多いと思われます。
 
 
 TKCのPXまいポータルを利用している会社は、Webで扶養控除等申告書の回収が終わり、非常に簡単ですが、そのポイントは2点。

(1)2017年分と2018年分とで分けて入力

 
(2)配偶者がいる場合、『質問形式による扶養区分』で判定がベター

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M One News 17-08           2017/11/17 年末調整もすべてオンラインに

 国によるICT(Internet Communication Technology(情報通信技術))活用の第2点目が、年末調整。
 確定申告同様、年末調整もオンラインになる方向です。
 保険会社から発行される保険料控除証明書、銀行から発行される住宅ローン控除証明書などがオンラインで発行され、既に電子化が認められている扶養控除等申告書等と合わせ、オンラインで年末調整が完結します。

 また、年末調整後の毎年5月頃に発行される住民税の特別徴収額通知書(給与から天引きする住民税の通知書のこと)の社員分も、電子化が検討されています。
 現在は、市区町村から紙で送付され、自治体側は印刷・封印・送付、会社側は開封・確認・システム入力・社員への配布・保管等、膨大な作業が発生しています。
 これこそ、最も電子化すべきものでしょう。

 売上に直結しない間接部門は、経費が即、利益に反映します。
 人不足が事業のネックになる現在、間接部門の生産性を今後、いかに上げるかは、ICTをどう活用するかにかかっています。
 経営者も、ITリテラシーがますます求められる時代になりました。

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M One News 17-06           2017/11/14 給与源泉税の計算方法変更

 2017年税制改正で決まった配偶者控除等の見直し。
 2018/01支給分の給与から、源泉所得税の計算方法が変更になります。
 改正のポイントは2点。
 (1)配偶者の所得要件の緩和 減税
 (2)世帯主の所得制限    増税
 
 詳しくはこちら。
 M-One News 17-01「税制改正:配偶者控除等の見直し①」
 M-One News 17-02「税制改正:配偶者控除等の見直し②」
 
 増税と減税が入り混じっていますが、年収1,220万円以上で配偶者控除が一切取れなくなるなど、高収入者に厳しい改正となっています。
 
 例えば、年収1,220万円のサラリーマンの場合、増税額は年12.5万円。
 月額の手取りベースで1万円以上減ることになります。
 昨年発表されたときは減税ばかりが報道されていましたが、増税の影響はかなり大きいと言えましょう。
 
 年収1,220万円未満のサラリーマンは、増税・減税どちらに転ぶかはわかりませんが、給与計算上、本人の年収と配偶者の年収の組合せで、配偶者控除 or 配偶者特別控除を適用するかどうかが決まるのです。
 それを表にしたのが次の表。

 注意しなければならないのは、その年の見積額で判定するということです。
と言っても、年初に1年間の年収が見積もることができることはそうないと思うので、前年の源泉徴収票や月々の給与明細から推定し、判定することになりましょう。 

                                             → 目次へ戻る

M One News 17-05           2017/08/29 ストレイト・ストーリー

 DVDで映画『ストレイト・ストーリー』を見ました。
 
 アルヴィン・ストレイトという1人の老人が、兄が倒れたとの電話で、兄に会いに旅に出ます。
 時速8㎞のトラクターで。
 米国アイオワ州からウィスコンシン州の560㎞を、野宿しながら6週間もかけて。
 
 2本の杖が無いと歩けず、眼が悪いため車の運転もできないアルヴィン老人にとって、誰にも頼らず、自分でできる方法は、家にあるトラクターでの移動しか無かったのでしょう。
 
 車ならたった1日の距離をあえて自分のやり方にこだわるのは、彼自身の人生でどうしてもやり遂げなければいけないことだと、思っていたからに違いありません。
 
 
 子供の頃のように、一緒に星を見たい。
 ちょっとしたいさか諍いで、10年以上仲違いしていた兄とこのまま死に別れしたくない。
 
 人々の嘲笑と家族の心配をものともせずに、その最後の夢を実現すべく、自分の名前の通り、まっすぐに向かう老人の目は、少年のように輝いています。
 
 
 人は誰でもやり遂げなくてはならないものがあるが、自分はそれを持っているだろうか。
 そして、それを自分の力でやり遂げる意志を持てるだろうか。
 
 思わず、そう自問せざるを得ません。
 
 
 旅の途中で丘にさしかかった時、トラクターが故障して立ち往生したアルヴィンは、「兄のところまで車で送ろう」と声を掛けられます。
 「気持ちは本当に嬉しいよ。だが自分でやり遂げたいんだ」
 「いいかい、アルヴィン。この先は、まだ丘が続くんだよ。また故障したらどうする?」
 「だが、どうしても自分だけの力でやりたいんだ。ぜひ最後までやり遂げてみたい。志を貫きたいんだよ」
 
 そしてアルヴィンはまた走り始める―――――。
 
 
 自分の可能性を賭けてやること。
 それは、自分が生きた証しそのものです。
 
 見事に自力でやり遂げて兄とまた星を見ることができたのは、アルヴィンにとって、さぞかし満足だったのに違いありません。
 この話が実話であるだけに、深く胸をうちます。
 
 
 兄の家に無事たどりつき、兄との再会を果たすアルヴィン。
 「あれで来たのか?」
 「ああ」
 トラクターを見つめる兄の目に涙が・・・・。
 体が不自由な兄にとって、やはり体が不自由な弟がやり遂げたことに、感動がひとしおだったのでしょう。
 
 
 
 年を取れば、何もかもが減っていきます。
 死までの時間・体力の衰え・巡ってくるチャンスの数・・・・。
 
 全てが減っていく中で、本当にやりたいことを、1つか2つに絞らなくてはなりません。
 若い頃のように、脇道にそれたり、道草をしている暇はありません。
 
 「年をとるほど、失うものも大きいんだ」
 アルヴィン老人の言葉です。
 
 
 選択することは誰にでもできます。
 本当に重要なのは、できるかぎり他人に頼らず、自分で出来る方法で、自分が選択したことを、最後までやり遂げることでしょう。
 
 自分が決断したことにエネルギーを注ぎ、それ以外のことにエネルギーを浪費しない。
 何かを選ぶということは、他の何かを捨てることです。

 時間は有限です。
 限られた時間の中で何をするかという姿勢こそが、重要なのです。
 
 
 50~70才代の人には、人間的にすごく立派な人もいれば、全くそうでない人もいる。
 生まれたときには同じだったはずなのに、どうしてだろう?
 その以前からの疑問に対する1つの解答が、そこにはありました。

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M One News 17-03           2017/07/10 藤井聡太氏の強さ

 藤井聡太四段の連勝記録が「29」でストップし、肩の荷が下りた31戦目。
 守備戦法「穴熊囲い」の破り手で有名な中田功七段相手に、藤井聡太が選択した戦法が、まさかの「穴熊囲い」。
 
 経験の差あって苦戦したようだが、最後は解説者も驚く打ち手の連続で、鮮やかな逆転勝ち。見事、30勝目を挙げた。
 
 
 経営においては、自分の強みを発揮して他社より優れないと、勝ち目がない。
 したがって、相手の得意なところを避け、自分の得意なところで戦うのが鉄則だ。
 
 アリジゴクがどんな姿をしているか知っている人は少ないだろう。
 巣から出てこないからだ。
 そして、巣の中であれば、必ず相手に勝てる。
 
 そう、自らの強みをフルに発揮して、自分の土俵で勝負することが、勝利につながるということだ。
 しかし、藤井聡太氏はあえて相手の土俵で闘った。
 
 記者からの質問への答えがふるっている。
 「(勝ちに)妥協するのは面白くない」と。
 
 
 「名人を超す」ことを目標に置いたのが、小学校4年生のとき。
 大欲は無欲に見えるというが、名人を超すには、眼前の勝利に一喜一憂してなどいられないのが本音だろう。
 
 31戦目を観戦していた師の杉本昌隆七段は、「勝利よりも内容を重視しているようだ。真正面から行って大丈夫かなと思った」。
 弟子よりも師の方が、よほど勝ちを意識しているではないか。
 
 連勝中のときも、周囲の熱狂に惑わされることのない自然体を維持していた。
 並の棋士なら有頂天だったろう。
 
 
 本人は言う。
 「弱点を無くせるように頑張りたい」と。
 
 弱冠14歳にして、驕らず謙虚に学ぶ。
 遥か先の目標に精進しつづける姿勢。
 
 強いはずである。

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M One News 17-02           2017/03/27 配偶者控除等の見直し②

 2つ目のポイントは、増税です。
 
(2)世帯主の所得制限 増税
 減税の一方で、税収確保のため、世帯主の所得制限が課されました。

         (注1)世帯主の給与収入は、他に何も所得が無いと仮定したときの目安。

 メディアでは(1)配偶者の所得要件の緩和 の報道のみで、税収確保の観点からの(2)世帯主の所得制限 はほとんど報道されていませんので、注意が必要です。
 実際、(1)配偶者の所得要件の緩和 による減税と、(2)世帯主の所得制限 の増税とを比較天秤にかけると、夫婦合計では増税の可能性がかなり高いと思われます。
 
 
 世帯主の所得900万円超で影響が出始め、所得1000万円超になると、配偶者控除が一切取れなくなることにより、確実に増税です。
 
 影響は各人によって異なるのですが、イメージとしては、このような感じでしょうか。

               (注1)給与収入は他に所得が無いと仮定して算定。

 所得900万円超のサラリーマンや経営者は、特に留意しなければいけません。
 サラリーマンは対応しようがありませんが、経営者は役員報酬見直しが必要になりますね。
 
 所得900万円超の納税者は全体の約1割なので、働き方改革への税制面でのサポートのしわ寄せは、結局、約10%の高額所得者にいったと言えましょう。

                                             → 目次へ戻る

M One News 17-01           2017/03/27 配偶者控除等の見直し①

 現在、国会は籠池氏問題で紛糾していますが、税制改正法案の方が各人には影響が大きいでしょう。
 その最大の影響は配偶者控除。
 専業主婦が減って共働きが増えており、年収103万円の壁を上げ、より働きやすい環境を整えるべく改正されました。
 いろいろ論点が入り混じるのですが、できるだけ平易に解説していきます。
 
 今回の改正のポイントは2点。
(1)配偶者の所得要件の緩和 減税
(2)世帯主の所得制限    増税
 いずれも2018年からの適用です。それを図にしたのがこちら。   

 
(1)配偶者の所得要件の緩和 減税
   

 図2のとおり、従来の103万円の壁が150万円に広がりました。
 ただ、世帯主の配偶者特別控除適用枠が広がっただけで、配偶者は給与収入103万円超で課税されることに変わりない点に、ご注意を。
 
 他の壁と合わせて整理すると、以下のとおりとなります。

 従来は、配偶者の課税される分岐点と、世帯主の控除不可となる分岐点は同じだったのが、異なることになりましたので、混同しないように注意しなければなりません。   

                                             → 目次へ戻る

M One News 16-20           2016/11/26 年末調整よりも法定調書の方が大変です

 郵便料金や発送配達費の節約は、コスト削減には欠かせません。
 2015/04/01のヤマト運輸の「メール便」廃止騒動は、「信書」って何?という疑問を多くの人に投げかけました。
 
「信書」とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」をいい、「民間事業者による信書の送達に関する法律」(通称:信書便法)で規制されています。
 
 信書とそうでないもの(以下、信書外と呼ぶ)の具体例を挙げると、
・信書・・・・請求書、納品書、申告書、通知書、招集通知、免許証などの許可証、印鑑証明書などの各種証明書、履歴書、給与明細など
・信書外・・・新聞、雑誌、カタログ、DMなど
 
 
 これはいいとして、わかりにくいのが、次のケース。
 
【ケース1】取引先から会社宛に送付する請求書は「信書」ですが、本社から支店へ送付するときは信書外
【ケース2】給与明細も、本社から支店へ送付するときは信書外ですが、支店から社員へ送付するときは「信書」
 
 
 ???ですが、もう少し見てみましょう。
 
【ケース3】ダイレクトメールでも、チラシなら信書外ですが、受取人名が文書自体に記載されているDMは「信書」
【ケース4】履歴書を応募者から企業に送付するときは「信書」ですが、企業が応募者に返送するときは信書外。ただし、合否通知を同封するときは「信書」
 
 
 つまり、内容物の重要さではなく、差出人の意思が込められているかどうかが、信書となる基準と言えそうです。
 前述の「信書」の定義にあったとおりだということですね。
 
【ケース5】キャッシュカード、クレジットカード、会員証、パスポート、航空券、入場券は信書外
 
 意外なのが、クレジットカードやキャッシュカードは信書外という点。
 航空券や入場券は金券ですらあるのに・・・。
 
 と考えてくると、信書とは別に、損害リスクを考えなくてはならないことに気づきます。
 また、実務上、紛失したときに備え、追跡可能性も実務上、外せない点です。
 
 つまり、差出人や受取人は、損害リスクと追跡可能性を考慮し、信書になるかどうかを考えるべき、ということになります。

  送付物の内容に応じて、うまく使い分けたいものですね。
 
 最後にもう1点。
 差出人の信用や評価も受取人に見られる点も、注意する必要がありますよ。

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M One News 16-16           2016/11/15 年末調整よりも法定調書の方が大変です

  M One News 16-15「マイナンバーで国税庁が虎視眈々と狙うもの②」で、法定調書関係の処理量が増えることをお伝えしました。
 補足で、マイナンバー収集先と法定調書の関係を図に表すと、下記のとおりとなります。

 社員は毎日顔を合わせているのでそれほど大変ではないとしても、報酬や家賃の支払先は意外と大変ではないでしょうか。
 テナントにマイナンバーカードや免許証を見せている大家さんの姿は、どうもイメージしにくいですからね。
 
 ましてや、講師をお願いしている先生にはなかなか言い出しにくいもの。。
 いずれにせよ、今年はマイナンバー初年度。
 準備は早めに取りかかったほうが良さそうですよ。

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M One News 16-15           2016/11/15 マイナンバーで国税庁が虎視眈々と狙うもの②

 M One News No. 16-07「マイナンバーで国税庁が虎視眈々と狙うもの①」で、国税庁が収入の元となる資産の情報を把握しようとしていることをお伝えした。
 それが本丸には違いないが、それも、情報収集体制が整ってこその話。
 つまり、マイナンバー導入後、国税庁は、情報収集体制を整えることに焦点を当て始める。
 
 この情報には、本人が提出する情報と、第三者が提出する情報がある。

 前者は確定申告、後者は法定調書と考えればよい。
 「法定調書」とは、給与、家賃、報酬などの支払った内容を記載して、税務署へ提出しなければならない書類を言う。
 おなじみの源泉徴収票や支払調書がそれにあたる。
 
 この「法定調書」提出は義務なのだが、実務的にはあまり重視されず、曖昧に処理している中小零細企業も多かった。
 税務署に一切提出していない中小零細企業もあったほどだ。
 源泉徴収票や支払調書は従業員や取引先に発行しても、税務署への提出は「ついで」な中小零細企業が多かったということだ。
 
 その主な理由はひとえに、実務が非常に煩雑な点にある。
 給与・報酬・家賃等の合計額を「法定調書合計表」に記載して税務署に提出するだけでなく、その根拠となる「源泉徴収票」は、給与年500万円以上の従業員・給与年150万円以上の役員の分を添付しなければならない。
 「支払調書」の添付は、外交員は年50万円以上を支払った個人の取引先のみ。
 税理士や司法書士、原稿料、講演料などは年5万円以上を支払った個人の取引先のみ。
 「家賃」は年15万円以上支払った個人の大家のみ(他にも細かい規定あり)。
 
 これら1/1~12/31の金額を集計して記載し、翌1/末までに提出するのだが、その時期は年末調整と重なる繁忙期。
 とてもやっていられない、というのが、実務担当者のホンネだろう。
 
 
 それに対し、税務署は言わばお目こぼし状態だった。
 それでも5~6年前から、年末調整説明会で、年末調整の説明が終わるとその後にある法定調書の説明を聞かずにさっさと帰る人が従来は後を絶たなかったため、年末調整よりも法定調書の説明を先にしたりするなどして、指導を強化してきた。
 
 そこに、2016/01/01からマイナンバーの導入。
 税務署の指導が、年末調整よりも、マイナンバーを記載する法定調書により一層重点が移ってくるのは、容易に想像できる。
 
 源泉徴収票には、本人だけでなく家族のマイナンバーも記載しなければならなくなったため、大きさが倍になったし、マイナンバー収集が容易な役員や社員はまだしも、士業(税理士・司法書士・弁護士など)や遠方の講師からも収集しなくてはならない。
 さらには、大家からも収集が必要だ。
 個人の大家は年配の方が多いから、収集に素直に応じてくれるかどうか、はなはだ疑問であろう。
 
 
 一方で、市区町村も脱税許すまじ、と動き始めている。
 というのは、源泉徴収票を給与支払報告書と名前を変えて提出させることにしているのだが、1ヶ所だけに提出すればいい税務署とは異なり、社員の住所地ごとに集計して提出しなくてはならない。
 税務署に提出しない中小零細企業が、市区町村だけきちんと提出するはずもない。
 市区町村は、提出された給与支払報告書に基づいて住民税を計算するから、提出しない企業の社員は、結果として住民税を脱税することになってしまう。
 
 補助金をもらいに窓口に行ったらバレてしまい、補助金どころか、数年間遡って住民税を支払うことになった社員もいるほどだ。
 きちんと実務処理していなかった会社が悪いのに、とばっちりを受けた社員こそいい迷惑だが、税収減に苦しむ市区町村が見逃すわけがない。
 
 
 さらに、一生変更できないマイナンバーの管理には高いセキュリティが必要なため、国は、マイナンバーを取り扱う会計事務所や社会保険労務士などに重い責任を課した。
 
 こうして、マイナンバー導入をきっかけに、税務署、市区町村、さらには社会保険管轄の日本年金機構も含めた包囲網が、専門家まで巻きこみ、構築されていると言える。
 われわれも情報管理社会に早く意識を慣らす必要がありそうだ。
  

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M One News 16-14           2016/11/11 住民税の給与天引きが義務化②

 M One News No.16-13「住民税の給与天引きが義務化」で、東京都の都内全62区市町村が「オール東京特別徴収推進宣言」を共同採択し、2017年度から住民税が特別徴収が原則となることをお伝えしましたが、実は、例外的に普通徴収が認められる場合があります。

  「(A)2人以下」は、夫婦でお店を営んでいるケースに配慮したのでしょう。
 つまり、人を雇っていれば、特別徴収せざるを得ないということです。
 
 しかし、上記A~Fに該当する場合でも、1/末の給与支払報告書提出時に、「普通徴収切替理由書」も併せて提出することとされました。
 これは、特別徴収が原則であることを事業主に対して強く認識してもらうために、あえて理由書を提出させているのでしょう。
 
 上記では「認められる基準」と記載しましたが、東京都・全62区市町村からのお知らせでは「普通徴収を認める基準」と記述され、思いっきり上から目線となっており、何が何でも、という意気込みを感じさせます。

                                             → 目次へ戻る

M One News 16-13           2016/11/11 住民税の給与天引きが義務化

 現在、総務省が号令をかけ、全国の自治体が企業に対し、社員の住民税を給与天引きにさせようとしています。
 
 そもそも、社員の住民税の納付方法は、社員自らが納付する「普通徴収」と、会社が給与天引きして納付する「特別徴収」の2種類があります。
 地方税法では、市区町村での特別の事情がない限り、「特別徴収」を原則としています(地方税法321条の3)。
 
 滞納の少なさ・手続きミスの少なさ・市区町村の手間の少なさ等から、市区町村が「特別徴収」を推奨してきたのは、当然といえば当然でしょう。
 
 
 ただ、中小零細企業の事務能力が追いつきませんでした。
 専任の事務員がいればともかく、社長が片手間に事務をこなしている中小零細企業では、負担が大きいのです。
 そのためか、いわばお目こぼしにあずかっていたのが現状です。
 
 
 そこへマイナンバーの導入。

 その目的が行政の効率化にある以上、これを機にと、総務省が音頭を取って動き始めたのです。
 特別徴収しかもう行わないと宣言する市区町村が数年前から出てきていますし、ここ数年、税務署主催の年末調整説明会では市区町村担当者が出張説明するなど、タッグを組んだ啓蒙活動が始まっています。
 
 企業数が多い東京都とて例外ではありません。
 都内全62市区町村は、共同で「オール東京特別徴収推進宣言」を2015/02/05に採択し、2017年度からの特別徴収完全実施に向け、追い込みにかかっています。
 http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/tokubetsu/index.html
 
 そのスケジュールは次のとおり。
      

    年 月      内 容
    2016/09指定予告通知書送付(→企業)
    2017/01普通徴収該当理由書の導入
    2017/05特別徴収税額通知書送付(→企業)

 「普通徴収を選ぶなら、納得できるだけの理由書を提出せよ」と個別対応のうえ、さらにPRマスコットキャラクターまで作っているのですから、その本気度が伺えようというものです。
 
 
 では、企業にとっては、単なる手間の問題だけかというと、そうでもありません。
 具体的には、
 
(1)社員から天引きした住民税の納付が遅れると、ペナルティが課される。
 会社からすると、社員の税金の徴収を代行しているのに、感謝状どころかペナルティがかかるのは、納得いかないところでしょう。
 一種の社会貢献と考えるしかありません。
 
(2)入社・退社時に手続きを忘れると、面倒なことになる。
 例えば、社員退社時に残りの住民税を全額徴収し忘れると、会社が負担することになりかねません。
 不承不承、負担すると、今度は所得税で給与扱いされ、さらに税金を納付するはめになりかねず、不本意度が増します。
  社員にとっても、デメリット大です。
 
(3)所得税の確定申告を行っていると、収入状況が会社にわかってしまう。
 副業がバレるリスクが大きくなること以前に、個人情報満載の所得状況の管理がきちんとされるのか気になります。
 もっともこれは、マイナンバー自体にも共通するところです。
 
 これだけのデメリットがあるので、中小零細企業への特別徴収がなかなか普及しなかったのですが、今度ばかりは自治体はホンキの模様。
 因みに、市区町村への納付をインターネットバンキングで行うことができますし、(10人未満であれば)所得税同様、半年に1回にまとめられる納期特例もあります。
 
 
 義務化の流れが止められないのであれば、賢く対応したいものですね。

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M One News 16-12           2016/11/11 マイナンバー収集時の本人確認

 企業が、社員からマイナンバーを収集するときは、必ず本人確認を行わなくてはなりません。
具体的には、扶養控除等申告書に記載したマイナンバーが合っているかどうかの『番号確認』と、本当に本人かどうかを確認する『身元確認』の2つの手続が必要です。
 
 その際の必要書類がこちら。

 社員は入社時に『身元確認』を済ませているでしょうから、『番号確認』だけで足りますが、外部の専門家や講師については『身元確認』まで必要です。
 
 注意したいのは、社員の家族のマイナンバー。
 企業は、社員の扶養家族のマイナンバーの本人確認不要という点。
 何故なら、家族のマイナンバーの『番号確認』・『身元確認』は社員が企業の代わりに行うため、企業は社員だけの本人確認を行えば足りるのです。
 
 ただ、扶養親族について国民年金の第3号被保険者の届出を会社が行うときは、例外的に扶養親族の『身元確認』が必要になります。詳しくは「Q&A中小企業のためのマイナンバー制度実務対応ガイドブック」のQ3~6をご覧ください。
 
 通知カードは約1年前に送付されていますが、本人が紛失してしまっていたり、またマイナンバーカードを本人がまだ申請していないことも考えられるため、マイナンバー初年度という点を考慮し、手続きは早めに着手したほうがいいでしょう。 

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M One News 16-07           2016/03/30 マイナンバーで国税庁が虎視眈々と狙うもの①

 マイナンバーの税務実務への影響は大きい。
 
 よく言われるのが、利益の把握。
 個人事業主や不動産の大家は、サラリーマンとは異なり、ガラス張りではない。
 経費は落とせるし、収入だって何とかなるかもしれない。
 税務署からすると、経費はプライベートとの境目が曖昧だから突っ込みにくいが、収入は首根っこをつかむようなもの。
 マイナンバー導入で収入を押さえることができれば、大きな武器になる。
 税務署が導入を待望していたのも納得できる。
 
 
 と、この「収入の捕捉」は誰でも容易に想像がつく。
 ただ、逆に言えば、収入がないと捕捉もできないし、ましてや摘発などできない。
 後手後手に回らざるを得ない。
 
 
 それが、もし事前に収入を予測できていたらどうだろう。
 そんなことが可能なのかと思うかもしれない。
 いや、十分可能なのだ。
 もし収入の元手がわかっていたら・・・。
 
 銀行口座や証券会社口座にマイナンバーを義務化しようとするのは、そのためだ。
 例えば、証券会社にA社の株を○○万株持っているとする。
 もうこの時点で将来の株式配当を税務署は予測できることになる。
 
 納税者がうっかり申告を忘れようものなら、国税総合管理(KSK)システムでアラートが鳴り、ペナルティ付きで納付書が送られてくる。。
 そんな未来になるかもしれない。
 
 銀行口座も同じだ。
 年収の何倍もの異常な入出金があれば、即座にアラートが鳴り、無申告の収入を捕捉できる。
 
 
 
 無申告ではないが、実際、それでつかまった人がいる。
 
 アニータ・アルバラードという女性を覚えているだろうか。
 チリから出稼ぎに来日し、日本人男性と結婚した女性だが、夫が勤務先の青森県住宅供給公社から横領した14億円のうち、大半の11億円を受け取ったという。
 発覚したのは国税局の税務調査とされているが、実は国際送金だった。
 
 時は2001年。
 そう、アメリカ同時多発テロがあった年だ。
 CIAが躍起になって調査した対象には、国際送金も含まれていた。
 銀行間の国際送金は、コルレスバンクと言って、いわば中継銀行経由で行われることが多い。
 日本とチリ間の国際送金では、米銀がコルレスバンクとして使われたのだろう。
 
 青森の片田舎からチリに数億円を送金している。
 しかも1年に何回も。
 
 絶対に怪しいとにらんだCIAが、日本の公安警察に通報。
 だが、公安警察は調査権限が無い。
 そこで、仙台国税局が税務調査として乗り込む。
 
 調査に入ってから30分で帳簿上「これだ!」と見つけたという。
 何回も税務調査に立ち合っているとわかるが、30分で発見することなどまずない。
 何をどの帳簿で探すかが最初からよくわかっていた証拠だ。
 公安警察官もその日限りは、臨時の国税調査官となったに違いない。
 

  
 マイナンバーが導入されれば、そんな銀行の入出金の異常値も即座に検知できる。
 資産の情報を押さえるのは、収入を押さえることより、何倍も戦略的価値があるのだ。
 

 ましてや、財産債務調書制度や国外財産調書制度も運用開始となっている。
 本人から報告させた資産の情報とマイナンバーで自動集計された資産情報を突合すれば、その精度は高まろう。
 本人が意図的に隠すのはもちろん、仮に意図せずにウソの報告をしてしまっても、ペナルティが課されるからやっかいだ。
 
 
 従来は、他人名義の口座や簿外の口座に振り込ませたり、収入の一部を家族の口座に分散させたりして、脱税を企てる人がいた。
 昔からあるそんな手口も、マイナンバーですぐ発覚する。
 いったん発覚すれば、その人は昔からやっていたであろうから、過去7年間遡って調べれば、かなりの多額になる。
 毎月の金額は少額でも、84ヶ月になると、自動的に多額になる。
 時効が7年ではなく10年に改正予定だから、なおさらだ。
 
 さらに年14.6%のペナルティがつく。
 分割納付よりも、サラ金で借りて一括納付した方が安くつくかもしれない。
 笑えない話だ。
     

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M One News 14-02           2014/01/01 海外財産調書制度

 国外財産調書制度がいよいよ始まる。
 これは、年末において5,000万円超の海外財産を所有する個人に対し、その海外財産の詳細を、確定申告期限の3/15までに税務署に提出しなくてはならないというもの。
 2014/01/01以降提出分から適用ということは、2013/12/末で5,000万円の時価があるかどうかが、判断基準ということだ。
 
 国税庁によると、2012/07~2013/06までの1年間で所得税の平均申告漏れ額は1件839万円であるのに対し、海外取引者だけに絞ると、1件1,551万円に跳ね上がるという。
 そのため従来から、金融機関から提出される海外への送金調書・海外からの送金調書を重点的に調査してきた。
 ただ、海外で授受されると把握しようがなく、限界があった。
 
 国際課税は、人や資本がグローバル化する過程において発生するTAXの奪い合いという、国どうしの租税競争という側面をそもそも持つ。
 
 
 が、それをはねのけたのが、2008年に発生した2件の国際的な脱税事件。
 
 1件は、2008/02にリヒテンシュタインの銀行の元従業員が1,400名の顧客情報をドイツの情報機関に500万€(当時約8億円)で売却した事件。
 各国で調査が開始され、ドイツでは有名な実業家の脱税事件にまで発展した。
 日本にも情報提供され、帝京大学の元総長の相続財産15億円申告漏れが発覚。
 
 もう1件は、スイスUBS銀行が米国人顧客に対して脱税指南をしていたことで、米国課税当局がUBS銀行に対して米国人顧客の情報開示を正式に求めた(召喚状発行)事件。
 この事件は両国の外交問題、さらにはスイス議会・裁判所まで巻き込むまで発展したが、2010年に両国間で租税条約を改正し、スイスが情報提供する形で政治決着。
 この過程でも、米国人富裕層の一部が制度を悪用して脱税をしていた事実が発覚した。
 
 
 さらに、リーマンショックが追い打ちをかける。
 2008/秋の世界的な金融危機発生により、多額の財政出動を迫られた各国政府は歳入不足を補おうと、タックス・ヘイブン(軽課税国)や情報交換に消極的な国に対して厳しい姿勢を鮮明に打ち出した。
 金融システムの安定化の観点からも、マネー・ロンダリングを含む不透明な資金の流れが問題となった。
 
 
 こうしたことから、2009/04のG20サミットでは「銀行機密の時代が終了」と宣言、政府間での情報交換の新しい基準「国際的に合意された租税基準」が策定された。
 その特徴をざっくりまとめると、
 ・他国のために情報収集義務を負う
 ・要請を受けた国は、金融機関保有情報まで開示する
 の2点。
 
 現在、このOECDの新基準に基づいて、租税条約が多数改正・締結されている。
 
 
 この流れを受けて、タックス・ヘイブンとの間では租税条約を締結しない方針だった日本政府もその方針を転換し、2009年以降、ケイマン・バミューダ・バハマ・マン島・ジャージー・ガーンジー・香港などのタックス・ヘイブンとも租税条約を締結し、情報交換によって日本人の海外財産の情報を取得できる体制を整えている。
 ナチ戦犯の情報開示を拒否したこともあるスイスとて例外ではない。
 改正された日本とスイスの間の租税条約は2011/12/01に発効、情報交換は2012/01/01以降の年度から開始されている。
 
 この情報交換には、「要請に基づく情報交換」「自発的情報交換」「自動的情報交換」の3種類があるが、実際、情報交換件数はうなぎのぼりで、しかも、日本から海外への情報交換の要請件数は海外から日本への件数の約4倍だという(2012/04~2013/03。国税庁発表)。
 
 
 いわば外堀を埋められている状態だ。
 こうなってくると、知らぬは納税者本人だけかもしれない。
 罰則もあるので、気をつけたいところだ。

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M One News 13-08           2013/07/29 クレンズ

 弁護士である義理の親族が亡くなり、告別式に参列してきた。
 そこであるハプニングがあった。
 
 火葬場に行き、待合室で火葬が終わるのを待っていたときのこと。
 小一時間も待った頃、1人の青年が入ってきて、すたすた喪主に挨拶に行ったと思うと、いきなり泣きじゃくり始めるではないか。
 
 人目もはばからず涙を流し、頬を濡らす涙を繰り返しぬぐい続ける姿に、一同、目が釘付け。
 「あれは誰だ?」
 
 通夜にも告別式にもいなかったその青年を、喪主以外は誰も知らないようだ。
 喪主が青年の肩をたたいて慰めるその姿から、親しい様子が読み取れる。
 
 いやが応にも疑問が膨れ上がったとき、骨上げに呼ばれ、疑問を抱えたまま、待合室を後にしたのだった。。
 
  
 精進落としの後、喪主に事情を聞いた。
 合意だったはずなのに婦女暴行で訴えられ、故人が国選弁護人として弁護し、執行猶予を勝ち取ったそうだ。
 
 その青年の家族は全員、歯医者だったそうだから、優秀な弁護士をいくらでも雇えたはずなのに、国選弁護人を依頼せざるを得なかったことから、家族の恥さらしとして誰もお金を出さなかっただろう事情を、容易に想像できる。
 エリート一家から出た犯罪者。
 いわば村八分であったろう。
 
 そんななか、信じ、励まして、執行猶予を勝ち取った。
 執行猶予期間中も、再犯すると刑が重くなるため、半年ごとに心配のTEL。
 青年に彼女ができたら、一緒に家に食事に呼んだりと、息子同然の目のかけよう。
 
 やっつけ仕事とは言わないまでも事務的な国選弁護人が多い中で、故人はそこまで親身になった。
 
 家族から見放された青年にとって、実の親以上に近しい存在だったに違いない。
 それなのに、その死に目にも会えず、火葬前に拝顔することすらできなかったのは、痛恨の極みであっただろう。
 
 
 
 「なんかね、最近いろんな人に会って、それでね、あ、この人って本当にこの道のプロだなあ、って痛感するときがあるのね。
 うまく言葉にできないんだけど、たとえばウエイターでも、ホテルマンでも、弁護士さんでも、お医者さんでも、なんかね、あるタイプの人は、そこに存在して仕事をしているだけで、その人の仕事に私が接しただけで、私がクレンズされちゃうの」
 「クレンズ?」
 「うん、それまで鬱々として濁ってたものが、一瞬にしてピカピカのきれいな水に変わってしまうような、そんな感じ」
 「なんかわかる」
 「ほんとにね、ごくたまにだけれど、そういう仕事人がいてね、そういう人の仕事に触れるだけで、私の日常がお掃除されたみたいになるのね。
すごいな、って思うの」
 「あたしはそういう仕事してきたかなあ・・・と思って。
 誠意をもって、最大限の集中力を払い、それでいてエレガントに、かつ明晰に、そして大胆に・・・・。そういう感じなんですよ、彼らは。
 常にパースペクティブがあり、そのくせ直感的なの。かっこいいの。そういう風になりたいなあって、思うんだよね。
 残りの人生で自分も・・・・」
 
 
 
 名人の仕事ってのは、周りにいる人間を、クレンズしちゃうんだよ。
 
 ものすごく落ち込んだとき、とてつもなく嫌な言葉に触れたとき、自分が辛い体験でボロボロになっていじいじしちゃうとき、悲しいことが重なってどんよりしちゃうとき。
 そういうときが人生にはままある。
 
 いろんなふうにして、心には細かくて薄汚い澱がたまる。
 どうしても溜まっていく。
 しょうがないことだ。
 
 そういうとき、自分の仕事、自分の役割に、片意地張るでもなく、威張るでもなく、それを楽しんで、ただもう誠実に、真っすぐに向きあっている人たち、そういう人たちに出会うと、言葉ではなく励まされる。
 自分の役割を全うしてる人は、きっと、ただ存在しているだけで、もうそれだけで、たくさんの人を支えているんだと思う。
 たぶん、その人は『労働』ではなくて『働き』をしているんだろう。仕事は、自分が『働き』という作用を担うための手段。
 
 
 ―――最後まで生き方を教えてくれた父であった。

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M One News 10-01           2010/01/01 夏への扉

 ぼくの飼っている猫のピートは、冬になると決まって夏への扉を探し始める。
 彼は、家に12もあるドアの、少なくともどれか1つが、夏に通じていると固く信じているのだ。
 そして、かくいうぼくも夏への扉を探していた。
 
 あなたなら、どんな気持ちになるだろう?
 もし、最愛の恋人には裏切られ、仕事は取り上げられ、生命の次に大事なものを騙し取られてしまったとしたら・・・・。
 ぼくの心は冬そのものだったのだ!
 
 
 そんな滑り出しで話が始まるのは、米国SF作家の巨匠ロバート・A・ハインラインの名作『夏への扉』。
 
 この本に出てくる猫のピートは、どのドアを開けてみても外は寒い冬なのだけれども、それでもどれかのドアで夏に行けると信じ、試してみたがってしかたがない習性を持っています。
 1つがダメでも、すべてのドアを試してみるまでは納得せず、人間用ドアまで開けろと飼い主にまとわりつく。
 どんなに繰り返そうと、夏への扉を探すのを決してあきらめようとはしません。
 
 何とかしたくても自分ではどうにもできなかったり、追い込まれて八方ふさがりになってしまうことがあります。
 こんなときに、信念があればもう少し頑張れる、やり方を変えてチャレンジすれば乗り越えられる、そんな気がします。
 この頑固な猫が、私にはとってもかわいく思えるのです。
 
 
 未来は、必ず過去に優る。
 人間はその環境に順応し、徐々に環境に働きかけ、新しいより良い世界を築いていく。
 誰がなんと言おうと、世界は日に日に良くなり優りつつあるのだ。
 
 そうはっきり謳い上げることによって、読者を勇気づけてくれる本を、私は他には知りません。
 
 
 
 そしてもう1つ大切なことも、この小説は教えてくれます。
 人生という大事なドアは、自分の手で開けなくてはならないということを。
 
 息苦しい毎日の中でじーっと黙って待っていても、誰もドアを開けてくれない。
 自分で開けないとドアの向こう側には行けない。
 
 もちろん、「向こう側」に何があるかなんて知らないし、考えてもわからない。
 でも、このドアを開ければ何かがある、光があるんだ、と信じきることで道が開けるのでしょう。
 
 行き詰まりや閉塞感―――言葉は何でもいいけれど、その扉を開けるのは誰でもない、自分自身だということです。
 
 
 
 未来への希望と、正直で誠実な人間への暖かいまなざしに、心温まります。
 そしてこの小説は、こう締めくくられています。
 
 「ピートはいつまでたっても、ドアというドアを試せば、必ずその1つは夏に通じるという確信を、棄てようとはしないのだ。
 そしてもちろん、僕はピートの肩を持つ。」

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M One News 09-40           2009/07/28 壁①

 安部公房の小説『壁』の中に、『魔法のチョーク』という短編があります。
 
 主人公の画家のアルゴン君は、あるとき魔法のチョークを手に入れます。
 壁に絵を描けば、その絵が本物になって現れるという魔法のチョークです。
 
 貧乏で常に空腹のアルゴン君は、食べ物の絵を描いて、食べ物を取り出しては食べて、空腹を満たす毎日をおくっているのでした。
 
 
 ある日、アルゴン君は窓を壁に描いてみます。
 ところが、窓は現実にならない。
 
 何故なら、窓の向こうの世界をアルゴン君が描けないからなのです。
 彼は、もんもんとして、見たことのない窓の向こうの世界をあれこれ想像するのですが、描けない。
 数週間、それこそ一生懸命になって考えるのですが、どうしても正確には描けない。
 
 
 このアルゴン君は、例えば、私であるかもしれません。
 歩けばいつか壁に突き当たります。
 迂回しようとしても、壁はどこまでも続いています。
 
 壁の向こうにぜひ行ってみたいのに、壁の手前で途方に暮れている私。
 あるいは、壁がどこかで途切れてはいやしないかと捜し回っている私。
 
 ここにはない理想や夢は、壁の向こう側にあるかもしれないと思うからです。
 
 
 壁は可能性を与えてくれるものかもしれない。
 壁を乗り越えることで、今の自分の限界を変えられるかもしれない。
 
 でも乗り越えられないと、アルゴン君と同じように、私も結局は壁に吸い込まれてしまうかもしれませんね。

M One News 02-04           2002/01/31 羽生氏の強さ②

  「強い」という場合、どういう形で強いというのだろうか。
 
 普通、たいていの人は自らの勝ちバターンを見つけ、それで勝負する。
 独自の戦法を研究し、磨きをかけ、『○○流』と呼ばれるいわばパターン戦法で一世を風靡したり、あるいは、連勝してタイトルを奪取したりする。
 
 しかし羽生氏の場合は、どうもそれとは異なるようなのである。
 オールラウンドにどんな戦法でも使いこなしてしまい、しかもめっぽう強いときているからである。
 
 
 どんな勝負でも、怖さを感じるのは、相手が伝家の宝刀を抜くとき、つまり、相手の勝ちパターンにはまりつつあるときだろう。
 それとも、いかにそのパターンにはまらないようにするか、脅えつつ戦うときだろう。
 
 それが相手の強みにもなるわけだが、羽生氏には『羽生マジック』という言葉はあるが、では、それがどういうパターンかと言うと、一定のパターンはなく、その時々で全く違う。
 勝つための必然性はあるが、その手法は多彩で、最初から予想できるパターンではない。
 
 そこに恐ろしさがある。
 何故なら、いつどういうときにそれが出るのか、既に出ているのか、あるいは、まだ出ていないのかすらも、後になってみないとわからないからである。
 
 
 史上最強の棋士と言われる大山康弘名人の口癖は、「将棋を指しているときが一番楽しい」であった。
 その大山名人の存在を大きな励みとする羽生氏にとって、真剣勝負である実践こそが、一番の研究の場であるようだ。
 
 大きな勝負でわざと危険を冒すこともあるという。
 だからこそ、「戦い方のオプションは、毎年増えている気がします」と、こともなげに言うのだろう。
 
 『強み』が、時間の経過とともに『弱み』へと変わっていくことは往々にしてあることだが、その『強み』がパターンでないなら、いくら外部環境が変わっても負けることはない。
 
 強いはずである。

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M One News 02-01           2001/12/25 羽生氏の強さ①

 棋士の羽生(はぶ)善治(よしはる)氏は、どうしてあんなに強いのか。
 通算勝率は約75%にまで達するという。
 素人を相手にならともかく、プロを相手に、である。
 
 他のプロ棋士の実力が上がったこともあり、7冠時代に比べると、その強さは相対的にやや薄れているが、やはり圧倒的に強い。
 5冠を維持しており、昨秋も王座戦10連覇を達成した。
 
 その強さの理由として、天才少年と呼ばれた頃は「定石にとらわれずに意表をつく手を打ってくる」「相手を上目使いににらむ‘羽生(ハブ)睨み“で相手はヘビににらまれたカエル状態になる」「羽生マジックと呼ばれる逆転勝ちが多い」・・・などと言われたが、果たしてそうだろうか。
 プロの実力差は、それこそ紙一重のはずである。
 
 
 下記は、1989年の日本経済新聞に掲載された本人のコメントである。
 
 「6才で将棋を覚え、小学生の頃にプロ棋士の存在を意識した私は、早熟と言われた。
 しかし、将棋の進歩が急ピッチになりつつある今の情報化社会の将来は、6才以下の幼児たちが、どんどん将棋を指すということになるかもしれない。
 そうなれば競争はより激しくなり、それにつれて将棋の戦法的進歩のテンポも加速される。
 その結果、現在の将棋は10年後には全く通用しないということになりかねない。
 そうした進歩に取り残されないためにも、油断は禁物、絶えず前向きな勉強が必要と思う」。
 
 
 1989年といえば、株式相場が38,915円の最高値をつけるバブル絶頂期。
 
 一方、15歳でプロ4段になり、19歳で既にトッププロ入りしていた本人の年収は、軽くみても数千万円はあったろう。
 遊びたい盛りの19歳という年代で、金も地位もある。
 加えて周りはバブルで浮かれており、いろいろ誘惑もあったに違いない。
 
 その中で、本人は何を考えていたのだろう。
 
 
 
 『人の真価は、危機に直面したときに表れる』という。
 しかし実は、『人の真価は、順調なときにこそ表れる』のではないだろうか。
 
 危機の時には、打つ手は限定される。
 現状を何とか改善しようと必死に考えるものだし、また、そう考えざるを得ない状態に追い込まれるからである。
 
 しかし、順調なときは、選択肢が数限りなくある。
 
 好きなこと・したいことがいくらでもできるとき、何をするか。
 金も地位も名誉も権力もあるとき、いかに自分を見失わずにいるか。
 
 金も名誉も手にした遊び盛りの弱冠19歳の若者は、毎日がお祭り騒ぎのバブルの真っ只中で、自分の本分を忘れずに、謙虚に精進し続けた。
 使いきれない程の金を持っていたのに、である。
 
 
 
 強いはずである。
 紙一重の実力差のプロの間で、頭2つも3つも抜きん出ることができたのは、この自意識の持ちようであろう。
 
 さらに、「多くの人に将棋を愛してもらいたい」と将棋界のことまで考えるのを怠らない。
 その想いは、「僕の大リーグでの働きで、少年たちに野球をやりたいという気持ちを持ってもらうことになれば嬉しい」と語ったイチローとも共通する。
 
 タイトルホルダーにふさわしい『想い』。
 勝者としての貫禄充分だ。
 
 
 
 羽生善治もイチローも、一見ギラギラしたところはない。
 淡々と勝負しているように見える。
 
 大欲は無欲に見えるという。
 大欲の前では、小欲はどうでもいいと思えるからだろう。
 
 淡々としているように見えるのは、大欲を持っているからに違いない。
 いわば『志』というべきものだ。
 
 そして、その志の高さをいかに守り抜くかは、日常茶飯の自己規律にかかっていることをわかっているのだろう。
 箸の上げ下ろしから、物の言い方・人とのつきあい方・息の吸い方・酒の飲み方・遊び方までの全てにおいて、その志を守り抜く意識で貫かれていなければならないということだ。
 
 
 
 ただ謙虚に頑張って成功するのであれば、誰も苦労はしない。
 大欲を持てるか否かが、成功するかしないかの分かれ目であるとすれば、成功するには大欲を持たねばならぬ。
 どんな大欲を持つか。
 
 
 現在31歳になった羽生善治氏は、次のようにコメントしている。
 「今後の10年間は、棋士としていろいろ難しい時期になると感じている。
 直観力や記憶力は、10代・20代に比べて落ちるだろう。
 しかし、この10年間の経験を盤上で生かしていく方法は必ずあると思っている。
 惰性に流れず、将棋をどこまで極められるか、行けるところまで行きたい、と考えている」

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