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M One News 22-02            2022/12/05インボイス制度の概要①(課税事業者向け)

 2019/10/01の消費税率アップ(8%→10%)から3年が経過し、いよいよ本丸のインボイス制度が2023/10/01から始まります。

 ここでは、消費税の課税事業者の視点から、インボイス制度の概要・影響などを、売り手・買い手それぞれの立場から、おおまかに説明します。

 対応方法や手続面は、一番最後にお伝えしますが、概要や影響だけでも、複雑なうえ、かなり影響も大きく、さらに事業者の立場によってケース・バイ・ケースなので、まずは課税事業者向けから。

  

 インボイス制度は、支払った消費税額等と適用された消費税率を、「適格請求書」等で把握する制度で、2023/10/01から開始されます。

 

 軽減税率制度導入により、軽8%・10%の複数税率が併存することとなり、どの商品・サービスのどの税率が適用され、税率ごとの消費税額等はいくらなのか、把握が難しくなりました。

 

 これらを正確に、売り手から買い手に伝えるのが「適格請求書」(インボイス)です。

 2023/10/01からは、消費税仕入税額控除を受ける際に、原則、売り手が発行した「適格請求書」等の保存が必要になります。

 この「適格請求書」は、税務署による審査・登録を受けた「適格請求書発行事業者」しか、発行することはできません。

 

 課税事業者は、原則、売上により預かった消費税額から、仕入等により支払った消費税額を差し引いて(仕入税額控除)、税務署に納付する消費税額を計算します。

 

(注1)消費税の計算方法には一般課税(本則課税)と簡易課税がありますが、簡易課税の場合、仕入税額控除は、実際にいくら支払ったかにかかわらず、決まった計算式で計算します。

 

 2023/10/01以降は、「適格請求書等の保存」が求められます。

 そのため買い手としては、基本的に売り手に対して適格請求書の発行を求め、受け取った適格請求書を保存しなければなりません。

 

 適格請求書の場合とそうでない場合を比べてみましょう。

 

 このとおり、買い手にとっては、適格請求書かどうかで、大きく税負担額が変わってくるのです。

(注1)簡易課税の場合は、仕入税額控除の計算式が決まっているため、適格請求書の保存義務はありません。

 

 他方、買い手から適格請求書の発行を求められた場合、売り手は適格請求書発行事業者でなければ、適格請求書を発行することはできません。

 また、適格請求書発行事業者は、求めに応じ、適格請求書を発行する義務があります(発行免除取引を除く)。

 

 では、以上を踏まえて、買い手の立場で影響を見てみましょう。

 免税事業者の外注先に外注費880万円(うち消費税等80万円)を支払ったとします。

 

 

 適格請求書発行事業者は消費税課税事業者に限られるため、仕入先・外注先等(上図の左側)が免税事業者である場合、事業者(上図の右側)は適格請求書の発行を受けることができません。

 そのため、事業者は消費税仕入税額控除を受けることができず、税負担が80万円増えてしまうのです。

 

 もし、現在は免税事業者の外注先が課税事業者になって適格請求書を発行してくれれば、税負担増加はありません。

 

 ただ、2023/10/01からインボイス制度をフル適用すると影響がかなり大きいため、その影響を緩和すべく、6年間は一部を仕入税額控除できることとされています。

 

 

 売り手として適格請求書発行事業者となった場合には、「交付」と「保存」が義務付けられます。

 

(1)発行

 買い手(課税事業者)の求めに応じ、適格請求書を発行する義務があります。

 そして、返品や値引き等を行う場合は「適格返還請求書」を発行し、金額などを修正する場合は「修正した適格請求書」を発行しなければなりません。

 

 ただ、事業の性質上、適格請求書発行事業者であっても、適格請求書発行が困難な取引は、発行義務が免除されています。

 ① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送

 ② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)

 ③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)

 ④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等

 ⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

 

(2)保存

 (1)で発行した適格請求書等のコピーを保存する義務があります。

 

 いままで、仕入税額控除適用のためには、適格請求書が必要とお伝えしてきましたが、インボイス制度に関する部分だけでしたので、消費税全体まで広げて整理します。

  

(1)保存が必要となる帳簿

 

(2)保存が必要となる請求書等

 原則として、以下の請求書等の保存も必要です。

 ① 適格請求書

 ② 仕入明細書等(適格請求書の記載事項が記載され、相手方の確認を受けたもの)

 ③ 卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡、及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類

 

 帳簿と請求書のいずれもが必要というわけです。

 

 現在、3万円未満の取引に係る仕入税額控除については、請求書等の保存がなかったとしても、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで適用することができる特例があります。

 ただ、インボイス制度開始後は、この特例を適用することはできなくなります。

 原則として、3万円未満であっても必ず適格請求書等の保存が必要となります。

 

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