国税総合管理システム(KSK)が2026/09/24、2.0にバージョンアップされます。
その目指すところは、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)。
多くなる一方の業務量に対して、深刻化している人手不足の解消が、DX推進の最大の理由です。
そもそも2020年12月に菅内閣で閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において行政DXの必要性が示され、国税庁も2021/06/11に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」を公表、さらには、2023/06/23に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」にアップデートされました。
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/index.htm
以前から若手調査官の人手不足や調査能力の向上が課題となっていたところ、コロナ禍に突入。
税務調査を思うように実施できない状況が続き、結果、若手の国税調査官の多くが現場経験を積むことができず、税務調査レベルの低下が深刻な問題でした。
以上が背景ですが、税務行政のDXが進展すれば、さまざまな税務・納税者情報が一元管理されるようになり、AIやビッグデータの活用によって、税務調査の効率化と高度化を実現することができるようになると期待されているのです。
「納税者目線の税務行政」や「納税者の利便性の向上」などの、いわば耳当たりの良い言葉を除いてまとめれば、その内容は2点。
(1)紙資料中心からデータ中心へ
(2)税務署内の縦割り解消
データ中心の事務運営が実現すれば、従来の所得税・法人税・相続税といった部内の縦割りを廃したデータ管理も可能になるため、今後は税務調査体制にも大きな変化が生じてきます。
実際、複数の税務署の内部事務を国税局業務センターで集約処理する「内部事務の一元化」は、税務署の重点課題の1つである「消費税の不正還付事案」で大きな成果を挙げていると聞きます。
また、同じく重点課題の1つである「国際租税回避への対応」では、外国税務当局との情報交換や徴収共助を拡大・強化していく方向です。
さらに、AIやビッグデータを活用した効率的な調査ノウハウも構築中です。
税務調査先をAIが選ぶ将来になるということです。
会計検査院が毎年、検査・公表している内容を見ていると、税制が複雑になりすぎて人間ではもう追いきれないため、AI利用は必須と思います。
国税庁は、税制調査会で「2020年にOECD(経済協力開発機構)税務長官会議で取りまとめられた『税務行政3.0』が目指す方向性である」と発言しています。
「税務行政3.0」とは、日常生活を送っていれば、税務自動処理がいつの間にかなされるというビジョン。
いずれ、「申告は大変なもの」という常識が、「申告はカンタン」という常識に変わっていくのかもしれません。
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