国税総合管理システム(KSK)が2.0にバージョンアップすることにより、節税が結果的にできなくなってしまう可能性が高まってきました。
特に、自宅の減価償却費を計上して節税している人は、要注意!
理由は5点。
自宅売却益3000万円まで課税がない(夫婦共有名義ならMax 6000万円)という優遇税制がありますが、事業に利用し、減価償却費等を計上していると、その優遇税制を適用できません。
例えば、自宅を居住50%・事業50%利用していると、居住部分には3000万円控除が適用できますが、事業部分には3000万円控除が適用できないことになります。
売却益3000万円に対して優遇税制がフルに使えるとTaxゼロに対し、事業50%利用だとTax 300万円。
他の優遇税制(低税率)も適用できなかったり、相続時も不利な評価になるなど、デメリットが多いと言えます。
売主個人が現在は消費税免税であっても、2年後に消費税課税が見つかる可能性はかなり高いと言えるでしょう。
売却する自宅の事業分は消費税課税の判断とされ、年1,000万円超になれば、2年後に消費税が自動的に課税となるためです(実際の負担額は、2年後の事業業績による)。
仮に、事業割合50%なら自宅の売却価格は2,000万円以下、事業割合20%なら5,000万円以下でないと、2年後に消費税がかかってしまいます。
実際には、さらに事業売上が加わりますから、自宅の減価償却費を計上して節税している人が自宅を売却すれば、まず消費税課税になると思っておいた方がいいでしょう。
以上は、売主が消費税免税の場合。
売主が既に消費税課税であれば、消費税の上乗せ納付が売却年に必要となります(2年後ではない)。
自宅売却先の不動産業者は、売主による居住利用を前提に税務処理を行います。
本来、自宅建物分の消費税(土地は消費税不課税)を業者が負担すべきところ、消費税上、負担しなくてよい、とされているわけです(転売目的の場合)。
それに対し、売却不動産が事業利用されていると、業者は消費税を負担しなければなりません(売主個人が非インボイス事業者を前提)。
仮に不動産売価1億円のうち建物分が3000万円なら、消費税は150万円(事業割合50%の場合)となります。
業者の買取価格がその分、下がってしまうかもしれません(あるいは、後から請求されるかも)。
国税庁が躍起になって収集する資料のデータ保存先が、国税総合管理システム(KSK)。
ここに保存されているデータに基づいて、申告漏れはもちろん、脱税にも目を厳しく光らせているのですが、このシステムが2026/09/24に2.0にバージョンアップされます。
(注1)KSKバージョンアップの内容と影響は、下記参照。
・M One News 25-01「国税総合管理システム2.0の衝撃①」
・M One News 25-02「国税総合管理システム2.0の衝撃②」
具体的には、税目間の横断的処理がなされるため、いままで見つかりにくかった上記のあぶり出しがはるかにカンタンになるのです。
ご存知のとおり、不動産価格は現在、高騰しています。
東京都心3区の中古マンションの平均価格はとうとう1億8,000万円を超えました(23区では約9,000万円)。
このことは、売却益が多額になる可能性が高いことを意味します(高く売れるのはいいことですが・・・)。
要約すると、毎年の節税フロー累計額よりも、将来のキャピタルゲイン課税額の方がはるかに多額になりつつあるということです。
もちろん個々のケースで異なるので一概には言えないのですが、自宅の減価償却費を計上して節税している人は、節税戦略を見直す必要に迫られていると言えるでしょう。
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