「税」という概念が生まれたずっと遥か昔から、国税庁はありとあらゆる情報を集めてきました。
源泉徴収票などの法定調書の類(たぐい)から、果ては、脱税しているに違いないとマークしたラーメン店の箸袋の数まで。
そして現在、その情報収集がさらに広がっています。
具体的には、銀行など金融機関の預貯金情報です。
税務調査対象者や滞納納税者等の預貯金情報(口座の有無や入出金記録等)を、税務署は従来、書面で照会し、入手していましたが、2021/10からはオンライン照会による入手に切り替えられました。
そして、金融機関だけでなく、2022年から生命保険会社、さらには、2024年から証券会社へと拡充。
結果、開始当初の2021年は28万件(37行)だったのが、なんと2024年には835万件(431行)へと、30倍に激増したのです!
この激増は、怪しい納税者が多いためというより、書面照会時の数週間から数日へと大幅に短縮できるオンライン照会の方が、税務調査の効率性の大幅アップが見込まれることが主因と思われます。
そのためか、相続税の実地調査件数は実際、3年連続の増加となっています。
オンライン照会は、デジタル庁を中心に関係省庁が連携し、政府全体としてその活用が推進されています。
その方針のもと、国税庁は、入出金記録の期間の延長や、対応する金融機関数(現在は7割)を増やす働きかけを行っていくのだそう。
また、資金決済業者(○○ペイ)やクレジットカード会社などにも協力依頼を行っていく方針だとか。
ますます、国税庁の情報収集能力はアップすることになります。
一般的に税務調査は怖いものですが、なんと待ち望む相続人がいらっしゃいました。
亡くなった夫が1人で財産管理をしており、残された家族は何もわからないという状況だったのです。
「うちには、もっと資産があるはずだ。相当収入もあったし、いろいろ運用もしていたはずだから・・・」
ところが、いくら探しても、その痕跡すら見つからないのです。
「あーあ、早く税務署が税務署に来てくれないかしら。税務署だったら、きっと夫の財産を見つけてくれるわ」
このエピソードは、税務署の情報収集能力が高いことを表しています。
因みに、この相続人に後日、念願の税務調査がやってきましたが、何も財産は見つからなかったそうです。
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